趣味から年商40億のビジネスモデルを生み出す考え方
- 2019.12.18
- 発想法
金庫番として、ベンチャーの住宅メーカーに勤めていたことがある。
社歴7年ほどだったにも関わらず、売上は40億を超えていた。
なぜ、この短期間でここまでの規模になったのだろうか。
入社する前から疑問だった(金庫番の役目として、当然知っておく義務もあったが)。
その答えは、コンセプトを中心としたビジネスモデルにあった。
標榜するコンセプトは、「非日常」。
ここでうん?!と思った方もいるだろう。
そうなのだ。「家」は本来「日常空間」だからだ。
単純に反対に考えたわけではない。
そこには意外な新しいビジネスモデルのネタを発想の道筋があったのだ。
趣味の観点から思考を広げる
創業者は、サーファーだった。クルーザーも所有し、各地をめぐるほど熱の入りようだった。
元々大手住宅メーカーの営業職から独立し、事業を立ち上げた。
当初からこのコンセプトだったのかと質問したことがある。
「本来、非日常は家の外にある。外にある施設で経験するものだ。しかし、だからこそ、それはたまにしか味わえない。わざわざ交通費と時間をかけ、出掛けていく必要もある。もし、家の中が「非日常」ならどうだ?毎日それを味わうことができる。きっと家に帰るのが楽しいに違いない」
そうして、完成したのがイージーオーダーによる「リゾート型住宅」だ。サーフィンができるような海沿いを中心に、トロピカルな要素を盛り込んでいた。
オペレーションフローは一般的な住宅メーカーのそれとほとんど変わりはない。
土日を中心に展示場を開設し、近辺にチラシを配布して、集客。興味を持った家族に提案。仮契約を経て、銀行へローン申請。通れば、正式に設計をスタートし(先に別費用で設計だけ済ませるケースもあった)、審査が無事降りれば着工という流れだ。(もちろん、土地探しからスタートする場合もある)
違いは、仮契約から竣工まででかかる期間は、半年〜1年程度だったことだ。かなり短い。その理由が「イージーオーダー」だ。
予めタイプを5〜7種類程度プランとして提示しておき、限定的なカスタマイズ(浴槽のタイプやトイレの数など)を盛り込んで設計を済ませる。こうしておくことで、部材発注をまとめておくことができた。
(当然、物流や保管コストも圧縮できる)
冷静な目が必要
自分が好きだからといって、ビジネスになるとは当然限らない。
忘れてならないのは、冷静かつ客観的な視点だ。
サーフィンに限って見ると、レジャー白書によればその人口は60万人ほど。一見少ないようにも見えるが、これは実際に「サーフィンができている人」だ。
やりたくても出来ない、昔やっていたが、今は海が遠いので行かなくなったという人は少なくないはずだ。とくにわざわざそのために準備が必要になるという人は多いだろう。
60万人は少ないようにも見えるが、歴代のレジャー白書を見直すと、この数字はそれほど大きな変化を遂げていないことがわかる。つまり、常に一定数いるということが明らかだ。
この微妙な規模は、対大手に効果がある。
わざわざ、別の生産ラインを構えて、乗り込むほどではないと判断するだろうからだ。
実際、金額の調整で失注することは良くあったが、一方で「目的買い」の対象にもなっていた。ここまで絞込んだからこそと言える。
自分の好きなこと+冷静なビジネスの視点
よく、起業セミナーなどで、「自分の好きなことで起業しよう」という言葉を聞くが、このケースを見ても、あながち間違いではないこともわかる。
ただし、あくまで「自分のやりたいようにやる」のではなく、「ビジネスとしての整合性(Consistency)」も欠かせない。
これはと思ったら、前日に書いたラブレターではないが、一度寝かせて、果たしてビジネスとして成立するのか、どのような機能を加えれば成立するのかを吟味してほしい。
立ち上がりは自分の趣味や好みであったとしても、年商40億のビジネスに化ける可能性があるからだ。
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