【事例1】短期収益型モデルを組み込み、年間3,700万円のプラスにした中堅住宅メーカー


1.現状・課題

千葉県にある社員数40名、年商50億の中堅住宅メーカー。
社歴は12年。個人向けのイージーオーダー型住宅で独自のコンセプトによって急激な成長を遂げ、株式上場も視野に入れていました。

社内規定をはじめ、ガバナンスを強化し始めた矢先、建築基準法の改正によって売上が激減。営業体制・販路の急激な拡大によって大きくなっていた組織が重くのしかか
ってきました。

販路・拠点拡大に伴って増やし続けていた銀行からの借入金が約27億。月次の返済額が平均で2,000万円にも上り、キャッシュ・フローがもはや回らない寸前でした。

2.改善の方向性

キャッシュ・フローを悪化させていた最大の原因は2つ。
一つは、肥大化した総資産です。ブログでもご紹介しているとおり、バランスシート全体が大きくなりすぎると、お金の流れが悪化します。

もう一つは、売上に波があること。住宅販売を含め、不動産販売のアキレス腱とも言える点です。
こうした原因を踏まえ、次の2点の対策を立案しました。

  1. 「財務基盤の再構築」による全体規模の縮小
  2. 時間軸の短いビジネスの投入

2-1.総資産の圧縮

2-1-1.稼働率の引く資産の売却

拠点確保や販売用に、自社物件として多くの土地を所有していました。一覧を作成し、稼働前のものを中心に、任意売却と銀行支援の2通りで4割を売却しました。

2-1-2.一部事業の売却

本業の住宅販売とは別に行っていた事業を取引先に売却。
これによって、「非共通コスト」の削減を図りました。
※売却に伴う人員の労働条件は、1年間据え置きを条項に加え、売却先の了承を得ました。

※非共通コストとは?
コンビニエンスストアが全国に約50,000店も広げることができたのは、この共通コストの考え方があるからです。

例えば、コンビニコーヒー。
チェーン店すべて同じ機械が使われています。
コーヒーマシンにかかる購入費用からメンテナンス費用までどのお店でも同じです。

これ以外でも、店舗構築費用、仕入れ・物流費用など多くのコストがどの店舗でも使える共通のコストになっています。

この共通コストの割合が十分あるビジネスモデルだけが、いわゆる「規模の経済」の恩恵を受けることができます。

反対に、非共通コストとは、共通コストの反対。つまり、その店舗や拠点ごとの特有のコストです。拠点を広げれば広げるほど積み上がってしまうコストです。

規模の経済の恩恵を受けられるビジネスモデルはそれほど多くありません。自社のビジネスモデルが拡大に適しているのかどうか、ぜひ共通コストの割合をチェックしてください。

2-2.コスト集約

総資産の圧縮と同時並行で、「コスト集約」を進めました。共通化できないコストを多く抱えている場合、コストをできる限り集めることで同じような機能を持つことができます。この住宅メーカーでは次の2点を立案、実行しました。

2-2-1.関東圏へのドミナントシフト

広告宣伝、人件費による売上効率を分析して、全国に拡大している拠点を関東圏に集約を図りました。結果、売上は約35%程度落ちましたが、広告費、人件費などを27%以上削減できました。

各拠点に併設されていた住宅展示場もロードサイドにあるショッピングセンターへ隣接させるとともに、来場者が一度に見られるように全モデルパターンの展開し、販管費の大幅な圧縮を図るとともに、販売機会の向上を図りました。

2-3.ショートタームビジネスの投入

総資産の圧縮、コストの集約の効果が出始めたところで、年間で大きな波のある上の平均化に取り組みました。

2-3-1.既存顧客へのリフォーム提案

創業から12年、既存顧客は300名をゆうに超えていました。この資産を有効活用しない手はありません。
販売から5年を超えた顧客を中心に、「不」の解消ではなくライフスタイルの変化(家族が増えた、子供が大きくなったなど)を前提課題として、住宅の見直し提案に着手しました。

2-3-2.新規顧客獲得施策

展示場は朝10時から夕方6時までしか使われていませんでした。資産の有効活用として、非展示時間帯を有効活用することで資産の回転率を狙いました。
有料での1泊2日の居住体験ツアーです。購入を検討している家族向けに実際に泊まってもらうことで、口コミ狙いと契約の促進を図りました。

3.結果

借入金は銀行団の了解を得て、リスケを実行。結果、月次返済額を10分の1に減りました。合わせて実行した総資産の圧縮とコスト集約によって、固定費を中心に30%以上のコスト削減が実現。結果、年間で約3,700万円のフリーキャッシュを生み出すまでに至りました。

企業規模は縮小したものの、安定した財務基盤の構築が実現できつつあります。