【事例5】財務リストラとフィナンシャル・リテラシー向上策で年間4,000万円が残る体質になった製造業

1.背景・課題

神奈川県川崎にある製造業。年商32億、借入金18億円、従業員数27名。

新製品開発競争による資金負担を銀行借入でカバーしていましたが、開発から販売までのサイクルが1年半と長く、固定費の負担が大きくのしかかっていました。

あるタイミングで製品の売れ行き悪化が引き金になり、資金繰りを圧迫。一転して、銀行返済が厳しい状態に陥りました。

資金繰りを根本的に改善しつつ、中長期の事業計画策定をしっかり行いたいとの要望も踏まえ、改善サポートに着手しました。

2.対策

財務モデルを精査したところ、過度に開発を優先したことによる損益分岐点の高さが問題になっていました。

2−1.財務リストラ

金融機関8行に対して、リスケの申し入れを行いました。期間5年の経営改善計画を提示し、元本返済を猶予の上、一律で月額返済額を5万円まで減らすことに成功。

これによって月次で返済額約2,000万円がほぼ丸々軽減。取引先への未払分、社会保険料や源泉税の滞納分解消に投下し、差押などのリスクを減らしました。

並行して、製品ごとに変動していた外注先統一を実施。材料仕入れの一括など製造原価を図るとともに、一部製作を外部発注していたものを内製に切り替えなどを行ない、売上総利益を改善。続いて給与テーブルの見直しなどを行ない、固定費全体を圧縮し、損益分岐点の引き下げを進めました。

2−2.事業計画の策定

事業計画が頻繁に変更されていたために、各部門で共通した計数認識がありませんでした。

製品ごとの営業計画と事業全体の運営計画を分け、銀行向け「経営改善計画」と合わせ、3カ年計画を策定しました。営業計画は4半期ないしは半期、事業全体は半期及び年度での見直しを図ることで定着を進めています。

2−2−1.フィナンシャル・リテラシー研修

事業計画の浸透を目的として、取締役を除く管理職、従業員向けに事業計数や決算書
の読み方について、「フィナンシャル・リテラシー研修」を実施しました。

※フィナンシャル・リテラシー研修
経理担当者が身に着けている法規・制度としての会計知識ではなく、自社のビジネスモデルに沿ったお金の動きを「感覚的」に掴むための研修です。

会計知識の有無は問わず、あくまで自社のビジネスをファイナンスの側面から捉える力が身につきます。

事業計画内容について組織内への浸透を進め、自社の目標や方向性、戦略など共通認
識の醸成を構築しています。

3.結果

元本返済猶予の了承、製造原価などの見直しによる損益分岐点の引き下げなどによって年間で約4,000万円残る体質になりました。

通常返済へはまだ戻せませんが、事業計画の統一、浸透、従業員の企業財務に対する感覚値の向上を進めつつ、さらに収益性の向上を図っています。

今後は、キャッシュのハンドリングを高めるために、予算制度の構築・運用などを計画しています。