〜差別化は一体どこに隠れているのか〜プロダクト(商品)を”分解図”にしてみた【ノートブック(文具)編】

〜差別化は一体どこに隠れているのか〜プロダクト(商品)を”分解図”にしてみた【ノートブック(文具)編】

時折、爆発的に売れるプロダクト(商品)を目にすることがある。
有名芸能人やテレビ番組で取り上げられたものもあるが、間接的な力によるものではなく、純粋にプロダクトが持つ力で大きな売上を生み出しているケースが多々ある。

なぜ、そのような結果につながるのか。
もちろん、他の製品にはない「差別化」が起因していることは言うまでもない。

ここで考えを止めてはもったいない。

具体的にそれは「何なのか」。
できる限り分解し、言語化しておきたい。
結果、自社の製品もしくは他のカテゴリーでの新しい可能性を見出すことにつながるからだ。

第一弾の今回は、身近にある「ノート」(※ノートパソコンではなく、文具のノート)について、分解してみたい。

そもそもプロダクト(商品)とは何か

具体的なプロダクト(今回はノート)について掘り下げる前に、そもそも「商品」とは何なのかを振り返っておく。

Wikipediaの引用をすると、

商品(しょうひん、英: product, commodity)とは、経済活動において生産・流通・交換される物財のことである。商品には具体例として食品や衣類などの物のほかに、法律相談や郵便配達などのサービスや、証券などの権利、情報などが含まれる。 販売する物財に主眼を置く場合には、商材(しょうざい)とも呼ばれる。

本来的にはサービスも商品に含まれるが、ここでは実態として形があるものを対象として、あえて「プロダクト」と表記している。

では、プロダクト(商品)は何から構成されているのだろうか。
プロダクトごとに多少の差はあるものの、機能、機構、形態、付随機能の4つに分解できる。

1)機能
そのプロダクト(商品)が持つ役割のことだ。
例えば、自動車なら物や人を運ぶ「運搬機能」。
スピーカーなら音を鳴らす「発音機能」などだ。

この機能によって、そのプロダクト(商品)の「効果」や「効能」が決まる。

例えば、鉄道なら「運搬機能」だが、その速度によって、早く目的地に着くという「効果」を出すことができる。

2)機構
1と似ているが、その商品を構成するしくみと構成要素のことだ。

例えば、パソコン。
パソコンは、本体、キーボード、そしてディスプレイから構成され、さらに本体は、マザーボード、グラフィックボードなどの各種ボードや、DVDなどの入出力装置、USBやLANなどのインターフェース類から構成されている。これらが、パソコンにおける「モジュール=構成素材」になる。もちろん、さらにCPUやGPU、各種演算装置に分解できる。

3)形態
色や形、そしてデザインのことだ。
いまどき、カラーが1色しかない商品はほとんどない。
また、グレードや商品コンセプトによって、少しずつデザインも異なる。例えば、万年筆。一体何万?何十万種類あるのか不明だが、いずれもこの形態が異なっている。

4)付随機能
直接商品には内包されるわけではないが、その商品に付属している機能のこと。例えば、商品の保証やアフターサービス、所有者向けの会員制の集まりといったものだ。

例)ペットボトルのお茶
例として、コンビニでよく見かけるペットボトルのお茶を分解図に当てはめてみる。

お茶の機能は、飲み物。つまり、飲料だ。
その効果は、喉の乾きを潤すことや、気分転換などがある。
ここまでは自宅で煎れるお茶と同じだが、「機構」つまり容器部分や、付随機能としてよくある、SNSとの連動企画(プレゼントの応募など)がその点で異なっている。

ノートとは何か

続けて、今回のテーマであるノートについて言及していく。

ノートとはそもそも何なのか。
多くの人に強い印象が残っているのは、ジャポニカ学習帳だろう。
http://www.showa-note.co.jp/japonica/

発売から45年。累計販売数はなんと12億冊に上る。
一時期、表紙の虫の写真が怖いといったクレームが話題になったこともあったが、今はそんなことはどこ吹く風で確固たる地位にいる。

さて、ノートの定義とはなんだろうか。
ここでもWikipediaの力を借りると、

ノートブック(英語: notebook)は、複数の紙を金具や糊で束ねた文房具である。帳面(ちょうめん)、筆記帳(ひっきちょう)などと呼ばれたりもする(以下、ノートと略す)。

多種多様なノートがあるが、文章あるいは説明に供する図形を書くのが主目的であり、絵を書くためのスケッチブックなどとは区別される。ノートの表紙、裏表紙を除いた紙の色は一般的には白色で、表面は無地のもの、あるいはあらかじめ横罫や縦罫、マス目が印刷されているものなどがある。

とある。
上述した、プロダクト(商品)の分解図に習って、“一般的な”ノートブックを分解してみると、

となる。なお、付随機能が空欄なのは、あくまでコンビニエンス・ストアでも入手可能なごく一般的なものを想定しているためだ。

さて、ノートの各要素はどうだろうか。

まず、機能。
書くことの1点になる。もちろん、ティッシュペーパーなど汚れなどを拭く、紙としての機能もあるが、それはあくまで「紙の機能」に過ぎない。

そして、その機能によって得られる効果・効能は、「情報を残すこと」もしくは「まとめる」ことだ。他にも何かの勉強のためといったことも考えられるが、ノート自体が勉強そのものの役に立つのではなく、「書きまとめた内容」がそれだ。
厳密には、参考書や教科書などがその効果を持つ。

続けて、機構。
表紙、背表紙、そして複数の紙で構成されている。ノートのカテゴリーにあるものは必ずこの機構で間違いはない。

そして、モジュール・素材。
表紙や背表紙などに用いられる用紙、そして表紙と本体の紙の部分とを繋ぎ、まとめる金具や糊だ。

形態は一般的に(スケッチブックなどを除いて)A4からA3の大きさの長方形のデザインだ。(正方形もあるかもしれないが、上下が不明になりやすいためか、ほとんど見かけない)表紙や背表紙に描かれるデザインは多岐に及ぶため、ここでは割愛する。

最後の付随機能だが、他の消耗品・日用品と同様に、まず当てはまるものがないので、ノートブックについては空白になる。

こうしたノートの各要素のいずれかをアレンジして、差別化を実現する。具体的な実例を続けてみていきたい。

差別化を実現しているノート

最近のものから、すでに定番化しているものまで以下6つについて分解してみる。

1)ルーズリーフ
2)英語学習用ノート
3)ウェアラブルメモ
4)水平化するノート
5)コーネル式ノート
6)アンドノート

1)ルーズリーフ

学生時代、よくお世話になったノートだ。
切り離しが可能になっていることで、使い回しができる。
一般的なノートの場合、一度何かを書いてしまうと、そのままそのノートの一部になってしまう(他に転用しにくい)が、ルーズリーフの場合、1枚ずつ書き込んで、それを別々にファイリングするという使い方ができる。

書くテーマが複数あったり、とにかく思いつくことをどんどん書き出したい(整理はあとでする)といった際に重宝をする。
1枚ずつになっていることで自在に移動可能な形態、それがルーズリーフの「差別化要素」だ。

2)英語学習用ノート

英語学習用に限らず、音符を書き込める音楽用ノートや自由に書き込むことを目的とした自由帳など、専用の用紙になっていることがその最大の差別化要素だ。

 

3)ウェアラブルメモ

メモを持ちながら作業することができない。
通常のノートの形状ではこの問題をクリアすることはできない。
結果、その手にマジックで書き込んでいた看護師さんの仕事から生まれたメモだ。

厳密にノートではないが、「書き込む」という点で相似性があり、例として上げた。

最大の特徴は、手に巻くというこれまでにない発想だ。
ノートやメモは手に持つものという常識を見事に打ち破っている。
一件、付箋でもいいのではと思えそうだが、付箋も結果的に手に持つか、机やテーブルの上などの「土台」がないと、うまく書けない。
また、医療という特殊な現場では、一般的なノートやメモ、付箋はその耐久性が乏しい(手に書かれていたのはそのためでもあるだろう)。
耐水性という他のノートにはない特徴も差別化の1つだ。

4)水平化するノート

有限会社中村印刷所(https://nakaprin.jp/)が発明した特許「水平開き」の技術による世界初の「水平に開くノート」。

リング式やルーズリーフではない、一般的なノートとは違い、キレイに開くことで、字がとても書きやすい。

開いたときにできる背表紙の山なり部分。書くことはもちろん、コピーのとき、中央部分一体が盛り上がるために、出来上がりが歪んでキレイに写らない。こうした悩みを解消したのがこのノートだ。

5)コーネル式ノート

コーネル式ノート術とは、1989年にアメリカの名門コーネル大学の学生のためにWalter Pauk氏が開発したノート術。
ノートの1ページをそれぞれ3つの領域に分け、情報を整理しながらノートを取っていく。この3つに分けるという作業によって情報の整理が簡単になり、ノートの中身が驚くほど分かりやすいものになる。

予めこの3つの領域が印刷されたものが、コーネル式ノートだ。
差別化のポイントはウェアラブルメモや水平化するノートではなく、英語学習用ノートに近い。さながら「勉強用ノート」と呼ぶことができる。

6)アンドノート

アンドノートは、A4書類を好きなページに、移動させ「閉じる」ことができる新発想のノートだ。(https://www.kanmido.co.jp/products/andnote/special.html

一般的なノートの不便さは、「どこに何を書いたがあとでわかりづらい」ことだ。
また、あとで書き足した分が、先に書いたものと当然バラバラのページに残る。もし、関連するページに、移動させることができたら・・・

こうしたできそうでできないことを実現したのがこのアンドノートだ。
ノートのページは固定しているものという「常識、思い込み」を覆している。

ノートの差別化ポイントは4つ

差別化できるポイントは3つあることがわかる。
ページ部分、表紙部分、そして形態部分だ。

事例として紹介したものを重ねると、

ページ部分 → 専用化されたノート:英語専用ノート、コーネル式ノート
表紙部分 →  利便性を向上させたノート:水平化するノート
形態部分 →  機能性を向上させたノート:ウェアラブルメモ、アンドノート、ルーズリーフ

となる。

事例として紹介していないものでは、ページ部分の「品質」がある。
ツバメノート(http://www.tsubamenote.co.jp/)に代表される、ノートとしての使い心地が良いものだ。万年筆で書き込んでもページの裏ににじまない、書いている際にペンがひっかからないなど、ページとして高い品質を持っている。

文具店で見かけるものは以上4つのいずれかか、もしくはコンビニエンスストアでも見かける一般的な安価なノートだ。

4つのポイントのいずれかもしくは複数

紹介した事例を見比べてみると、上述の4つのポイントのいずれか、もしくは、複数で「アレンジ」、つまり他のノートとは異なる「差別化」を提供している。

なお、発想する際によくありがちだが、「ノートとしての体裁、本質」を崩しては意味がない。

「ノート」の場合は、情報を「書くこと」、「書き残すこと」。

この点を維持しつつ、「それ以外」でアレンジをかける。
これは他のプロダクト(商品)でも同じで、差別化の鉄則の1つだ。
この点を念頭において、ぜひ、新しいプロダクト(商品)の発想を
進めてほしい。