出版業界を激変させる「フルオープン型」ビジネスモデルとは?
- 2017.09.02
- 事例集

今、出版業界ほど厳しい業界はないかもしれません。
昨年2016年の販売額は1兆4700億円で、12年連続のマイナス。書籍、雑誌のいずれもマイナスで、唯一の例外が電子書籍で前年比27%増の約1900億円。
こうした紙の本が大変な状況に追い込まれつつある中、新たなビジネスモデルが飛び出してきました。
すべてを見せてしまう
「NetGalley」
https://www.netgalley.jp/
出版デジタル機構が運営する完成前の新しい書籍を丸々読むことができるサービスです。
なんと、事前に会員登録するだけで、電子媒体で「ゲラ」=試し刷りを読むことができるのです。
そんなことをしてしまえば、さらに売上が厳しくなってしまうのでは?と思われるかもしれません。
しかし、予想に反して、このサイトで取り上げられた書籍の中には何万部も売上を伸ばしたものがいくつもあるそうです。
5月からベータ版で運用開始され、参加する出版社もKADOKAWAや講談社、集英社、小学館など大手ばかり。会員登録も順調に増えているそうです。
なぜ、うまくいくのか
理由は2つあります。
一つめは、そもそもの出版工程の中にあるものを流用した、という点。
試し刷りは当然行われます。また、著者を含め、関係者にも配られます。
つまり、そもそもやっていたことをそのまま拡大して、一般の人に広げただけ。つまりは、「余計なコスト」が発生しません。
2つめの理由は、先行事例があること。
フルオープンで中身を見せてしまう方法は、目新しいものではありません。
音楽業界におけるYouTubeでフルで流す方法です。
これも、「そんなことしたら、CDが売れなくなるのでは?」と思われがちですが、YouTubeに載せることでSNSを通じた全世界への拡散が期待できます。
今までその歌手やグループのことを知らなかった人が、そのPVなどを見て、新たなファンになる可能性は十分にあります。
無料で提供してしまうことには、もちろんかなりの抵抗を感じます。
が、その品質に自信があるならば、むしろ公開してしまい、高い評価を得た方が、ビジネスとして成功につながる可能性が生まれてきます。
もちろん、一定数はそれで終わってしまうかもしれません。しかし、一方でそれを気に入った人が「勝手に」拡散してくれる。広告宣伝費の観点に立てば、仮に売上が取れなくても、十分過ぎるほどでしょう。
今あるコンテンツをあえて、オープンにしてみる。きっと思いもよらないほどの莫大な新しい利益を生み出すかもしれません。
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