【訪日外客数激増】民泊に代わる新しい宿泊スタイルの可能性

   

先日、日本政府観光局が毎月発表する訪日外統計の2017年9月推計値(2017年1月〜9月までの推計)が発表された。昨年比で約18%も増加し、総数では2000万人を超え、年内には3,000万人の大台を射程圏内に捉えそうな勢いだ。

伸び続ける訪日外客数とその対応

期間の総数に限らず、それは以下の図の通り、偏りなくすべての月において前年比を上回っており、力強さを物語る。

【日本政府観光局 訪日外客統計】 2017年訪日外客数より筆者作成

5年前の2014年9月と比べるとその差はさらに明快で、単純比較で100万人から200万人と約2倍になっている。この勢いは当面続きそうだが、一方で以前から強く言われている通り、訪日外客の受け入れ問題が横たわっている。

昨年提示された国土交通省の資料によると、

【現状・課題】
・旅館業におけるインバウンド対応が不十分のため、地方の旅館業等の稼働率が低い
・地域の大規模イベント開催時、地域の宿泊施設の容量では対応できない
・インバウンド需要増加に伴い、旅行ニーズが多様化

【今後の対応】
・旅館等に対する投資促進
・旅館等の空室の有効活用
・宿泊産業従事者の人材育成“

「明日の日本を支える観光ビジョン」より

といったことが提言されており、問題の切実さの一旦を伺い知ることができる。

こうした政府の指針に対して、その存在感を増しているのが「民泊」だ。すでに東京・大阪だけでもその事業者数は2万を超えるほどに至り、目下競争激化の渦中にあるが、今年6月に制定された「民泊新法(住宅宿泊事業法)」によって営業日数が年間で180日以下と定められ、その勢いに影を落としている。一方で、民泊とは一線を画し、新たな差別化要素を持って市場の一角を担おうとするさまざまな宿泊スタイルも登場している。

さまざまな宿泊のビジネスモデル

民泊がビジネスとして提示したのは、「既存資産の転用としての有効性」だ。宿泊設備および施設を当初目的として作られたホテルなどと比べ、大幅にコスト、時間ともに導入イニシャルを押さえるポテンシャルを持つ。

民泊の場合、自宅やセカンドハウスをその対象としたが、ここでは、さらにその応用版として特徴的なものを3つ紹介したい。

1つめは、静岡県沼津市で株式会社インザパークが運用するその名も「INN THE PARK」。“泊まれる公園“をコンセプトとした公園一体型宿泊施設だ。「少年自然の家」をリノベーションし、現代的な複合型宿泊施設にしたもので、代々木公園に匹敵する約600,000㎡の広大な森林の中に、ドームタイプのテントや空中に浮いた吊り型のテントが設置されている。

2つめは、アトリエブックアンドベッド株式会社が運営する「BOOK AND BED TOKYO」。

“本に囲まれて眠りにつくことができる“というコンセプトをそのまま体現。本棚の中に設置されたベッドや、本棚でできたカプセルホテルのようなスタイルで、本好きにはたまらない空間を提供している。

森林、本に続く3例目は、学校だ。温泉地として有名な群馬県みなかみ町にある「泊まれる学校 さる小」。2008年に少子化に伴い統廃合により廃校となった猿ヶ京小学校をリノベーションした宿泊施設だ。コンセプトは「泊まれる 学べる 遊べる」。ただ泊まるだけではなく、広いグラウンドでは野球やサッカー、夏にはプールで泳げるなど学校ならではの体験ができ、誰もが持つ懐古感に触れるという独自性を提供している。

宿泊ビジネスに潜むリスク

既存のホテル、旅館に加え、民泊、そして民泊とは異なる資産を転用したモデルなどさまざまなプレイヤーが参入する中、今後宿泊ビジネスはどうなっていくのだろうか。

みずほ総合研究所が定期的に発表している「みずほレポート」9月22日付「2020年のホテル客室不足の試算」によると、“訪日外客数の増加に対する宿泊施設の不足状態は、2020年4,000万人という政府目標が射程圏内にあるとする一方で、民泊やクルーズ船の急増により、不足客室数は0.4万室程度となり、従来予想に比べ需給ひっ迫懸念は後退している”との見通しを示している。

こうした予測が実現した場合、宿泊ビジネスにおいては他のビジネスとは異なる負の側面が浮き彫りになりやすい。それは固定費性向に起因するものである。民泊など既存資産を転利用した形態の場合も例外とは考えにくい。例えば立地条件など宿泊ビジネスでは比較的緩和的に捉えられていた要素が、逆向きになる恐れである。

現時点はまだ市場そのものが右肩にベクトルを合わせているゆえ、結論的なことは未明だが、大きな節目となるであろう2020年まで残すところあと2年と2ヶ月。引き続き宿泊ビジネスの変化について注視し続けたい。


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