【プロダクト3層モデル図鑑100】037_万年筆
- 2025.11.05
- プロダクト3層モデル図鑑

万年筆は、単なる筆記具ではなく、使う人の思想や美意識を反映する道具です。添付のプロダクト3層モデルの図を見ると、万年筆製品が提供する価値が、いかに「書く喜び」と「所有したい」という感情的なニーズに深く結びついているかが分かります。
今回は、この図を基に、万年筆の持つ多層的な魅力を紐解いていきましょう。
万年筆のプロダクト3層モデル
1. 中核: 顧客が本当に得たい「中核の価値」
万年筆が提供する最も基本的な価値、つまり「顧客が本当に得たいもの」は何でしょうか。
それは、図の中央にある通り「書く喜び、所有したい」という、機能的価値と情緒的価値の両面を満たすニーズの充足です。この中核的な価値は、「長く愛用したい」「自分だけの道具を持ちたい」「心地よい筆記体験がしたい」といった深層的な願望を達成するための土台となります。
2. 実体: 製品の「具体的な形と特性」
次に、中核の価値を実現するための具体的な製品特性、すなわち「実体の製品」を見ていきます。万年筆の機能、品質、デザインなどがこれにあたります。
機能
万年筆の書き味と利便性を決定する要素です。ペン先の素材(14K, 18K, 21Kなど)、インクの充填方式(カートリッジ式、コンバーター式)、そして胴軸の素材(樹脂、金属、セルロイドなど)がこれに該当します。
品質
書き心地と耐久性に直結します。スムーズなインクフロー、長持ちするペン先、そして高級感のある素材の使用が、製品の信頼性と所有感を高めます。
デザイン
万年筆の美しさと個性を表現します。ボディデザイン、カラー、装飾、クリップ、天冠(キャップの頭部分)などが含まれ、所有する喜びを高めます。
ブランド
製品の持つ歴史と信頼性を表します。国内ブランド、海外ブランド、老舗ブランド、高級ブランドといった区分けがあり、それぞれが独自のコンセプトと価値を提供します。
価格
製品の持つ価値と技術の対価です。低価格帯から高価格帯まで幅広く、さらに限定品価格といった希少性を反映した価格設定もあります。
提供チャネル製品が顧客の手に届く場所です。百貨店、文具専門店、オンラインストアなどが、万年筆という特別な製品の販売に適したチャネルとなっています。
カスタマイズ
ユーザー個人の筆記スタイルに合わせた調整を可能にします。ペン先調整やオーダーメイドの対応が、唯一無二の書き味を実現します。
3. 付随機能: 製品に付加される「サービスと特典」
最後に、製品の価値をさらに高め、顧客体験を豊かにする「付随機能(拡大製品)」です。
保証・サポート
万年筆を長く愛用するための安心を提供します。修理対応、メンテナンスサービス、そしてお問い合わせ窓口などが含まれます。
情報提供
製品への理解と愛着を深めます。商品情報、万年筆の使い方やお手入れ方法だけでなく、万年筆の歴史や文化といった情報も提供されます。
関連サービス
万年筆のある生活を豊かにする周辺サービスです。名入れサービス、インクやペンケースの販売、そして万年筆イベントの開催などが含まれます。
パートナー
多様な商品や販売環境を支えます。文具店、百貨店、セレクトショップ、文具メーカーなどが、製品の製造・流通を担うパートナーです。
まとめ
万年筆は、プロダクト3層モデルで分解することで、単なる「筆記具」の機能に留まらず、高度な品質、洗練されたデザイン、そして修理や歴史といった付加サービスによって、「書く喜び」と「所有する喜び」を同時に提供する文化的な道具であることが明確になります。
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