最安値=ベストとは限らない。中間値の裏側にある顧客心理
- 2024.10.08
- コラム
1~2ヶ月スパンで、美容室に行く。
正直なところ、あまり「心地よい」時間ではない。
とはいえ、行かないわけにはいかない。
この気持ちを引き起こす最大の原因は、「時間の長さ」だ。
1回あたり長いところだと、1時間半はかかる。
さっさと終わらしてほしいのが本音だ。
だからと言って、QBハウスに行きたいと思わない。
1度も足を運んだことがないので、誤解も含むが、あの場所は「ブロイラー」になるような印象が拭えない。整列し、椅子に座り、髪を切り落とされる。そこに人間らしさを見出すことができない。あくまで個人的な意見だが。
もちろん、QBハウスには強いメリットがある。
時間がない、とにかく安く済ませたいといったニーズに対して、これ以上ない解決策であることは間違いない。
一方で、冒頭のような一般的な美容室の場合、時間もお金もかかる。
2つは真反対に位置している。
QBハウスと一般的な美容室。果たして、この2極しかないのか、とホットペッパービューティを検索していると、あった。カットのみで3,000円。シャンプーはオプションだという。
一般的な美容室の場合、カット+シャンプーで6,000円ほどするから、ちょうど半額だ。但し書きがあった。事前に髪を洗っておくことが条件だという。お安い御用だ。
初めてのところとあって、少なからず緊張感があったが、思い切って足を運んだ。存外、想定通りだった。入店してから支払いまで20分だったのだ。出来上がりも申し分ない。
そんな価格で経営が、と思われるかもしれないが、女性向けはこの限りではない。一般的な美容室のそれと変わらない。あくまで時間をかけたくない男性向けのメニューだ。
あっと言う間だったが、担当してくれた美容師さんと結構話ができた。聞けば、仕事中のビジネスマンが多いという。彼らも、どれほど時間がなくてもQBハウスには行きたくないのだそうだ。
QBハウスには行きたくないが、時間を掛けて美容室にも行きたくない。ちょうど中間に位置するこのニーズを見事にカバーしているんですねと伝えると、店舗がビジネス街にあるので、そういうことですと。
QBハウスが市場を席巻仕出したころ、急速に「1,000円カット」のお店が増えた。追従は戦略的に決して悪いものではないが、確実に「沈み込んで」しまう。
価格勝負は体力勝負の言葉どおり、かのヤマダ電機が拡大戦略の際に用いた、囲い込みのような展開が始まるとひとたまりもない。
人のニーズは2極ではなく、グラデーションであり、リゾームになっている。
極端な事例が登場すると、どうしてもその競合が用意した軸に思考が引っ張られやすいが、それは「極」でなく、「面」で抜き出された1つの成功例に過ぎないことに留意したい。
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