ステートメント宣言
「おまえの仕事はこの会社の3年後を創ることだ」
24年前、TISで当時の部門長が私に言った言葉です。
新幹線で通うような遠方の新規先に提案をしたい。
直属の上司2人からは“交通費の無駄だ!と叱責を受けました。
でも、それでもあきらめきれない思いで、行きたいと部門長に直訴したのです。
その案件が取れるかどうかはまったくの未知数でした。
ただ、新規先の担当者と交わした約束だけが頼りだったのです。
「1年半、待ってほしい。必ず、大きな案件を渡すから」
これ以外、なんの裏付けもありませんでした。
直立不動で部門長席の前に立つ私の顔はきっと不安でいっぱいだったと思います。
なにせ、入社以来、挨拶以外でほとんど話をしたことがなかったのですから。
もしかしたら、子会社に飛ばされるかもしれない。
ロクな成績も挙げていないくせに、交通費だけ使いたいのかと。
部門長は200人以上がひしめくフロアを見ながら、静かにいいました。
「・・・案件があるんか?」
「はい、でも取れるかどうか・・・」
「そうか、わかった。おまえがあるいうんやったら、あるんやろ。理由はそれで十分や」
「で、でも交通費が・・・」
「ええか、酒井。
このフロアを見てみ。みんな忙しそうにしてるやろ。
今、みんなが取り組んでいる案件は、3年前、5年前にだれかが、今のお前のように必死の思いで取ってきた案件や。
酒井、お前の仕事はそういうことや。この会社の3年後を創ってるんや。
だから交通費なんか気にするな。案件取るのに金がかかるのは当たり前や。
今後は俺の許可もいらん。お前のやりたいようにやれ! 全国どこでも好きなだけ行ってこい!」
その後全国を飛び回りながら、1年半の時間を掛けた結果、その案件は見事12億円の受注に化けることができました。
・・・・
お前の仕事は、3年後を創ること。
24年たった今もこの言葉を胸に刻みながら仕事に取り組んでいます。
営業を経て、財務、書籍の執筆、発想とその世界を変えながら。
そして、新しいビジネスを生み出す「発想」という仕事に、自分が持てるすべてを費やそうと決めました。これこそが3年後の未来を創り出すことそのものだと確信したからです。
今、これを読んでくださっているあなたもきっと私と同じような人だと思っています。
ずっと、ずっと長い間戦い続けてきた人だと。
そして、これからも戦い続けていくのでしょう。
「何があってもここから引き下がらない」
いつの日かそう心に誓ったんだと思います。
今を変えたい、新しい未来を創りたい。
あの人のためにやさしい未来を創りたい。
何度も、何度も、寝ている間も、食事をしている間も、激務に追われる毎日の中でも、ずっとずっと願い、そしてなすべきことを続けてきた。
そして、幾度も、幾度も失敗を重ねてきた。
人から馬鹿にされたことも、叱責されたこともあったかもしれません。
でも、あなたはやめなかった。
そして、これからもやめるつもりは毛頭ない。
あなたのように、消えそうになりながらも、でも強く光り輝くだれかの一筋の思いが、この世界を創り上げてきました。
あなたが「ある」と思えば、それは「ある」。
理由はそれで十分です。
当時の部門長の年齢になった今、今度は、私があなたの背中を守る番です。
あなたが大切に思うだれかのための、3年後を創り出すために。