【成功のロジック】「視力矯正」を捨てて「集中力」を売る。眼鏡の定義を書き換えて新市場を創り出す「再定義」のロジック

【成功のロジック】「視力矯正」を捨てて「集中力」を売る。眼鏡の定義を書き換えて新市場を創り出す「再定義」のロジック

どのような商品やサービスにも必ず特有の「定義」があります。
本なら「情報伝達ツール」ですし、居酒屋なら「酒類とそれに伴う料理を提供する飲食店」といった具合です。

一見、当たり前のように思えるかもしれませんが、実はここに新しいビジネスを生み出すチャンスが隠れています。それが「新しい定義」です。つまり、既存の定義から外れること。
例えば、歩行アシストパンツ。本来の「大人用おむつ」から離れ、「歩行をサポートする」アイテムに再定義。見事な成功を収めています。

同様に、「視力矯正のためのツール」という定義から離れ、「集中力を計測するツール」と眼鏡を再定義したのが今回の題材である「JINS MEME」です。一体どのように考えればこのような「新しい眼鏡」が思いつくのか。今回もしっかり掘り下げていきます。


1.市場と競合

 

図1 眼鏡の市場規模(単位:億円)

 

眼鏡の市場規模は小さく、約5,000億円。メガネトップをはじめとした大手5社で半分を寡占。コロナ禍を経ても安定した規模を維持している一方(図2)、裸眼視力が1.0に満たない子どもの割合は年を追うごとに大幅に増加しており(図3)、市場の底堅さが伺えます。また、世界レベルでは近視人口が大きな右肩上がりを続けており、眼鏡自体のポテンシャルの高さも確認できます。(図4)

 

図2 眼鏡市場の推移(単位:億円)

出典:矢野経済研究所

図3 裸眼視力1.0未満の子どもの割合(単位:%)

出典:文部科学省

図4 世界の近視人口(単位;百万人)

 

続けて、眼鏡に関するニーズとそれに応じた眼鏡の種類を掘り下げましょう。

 

2.ニーズと問題

 

表1 眼鏡に対するニーズ

 

眼鏡に対するニーズは、快適さを筆頭に、ブルーライトカットなどの機能性、ファッションアイテムとしてのデザイン性などが続きます。こうしたニーズに対応する眼鏡の種類にはどのようなものがあるでしょうか?

 

表2 眼鏡の種類

 

眼鏡には、本来の機能である「視力矯正用眼鏡」、近年付加された紫外線やブルーライトカットなどの「機能性眼鏡」、そして、ファッションアイテムとしての「ファッション眼鏡」の大きく3つのカテゴリーがあり、さきほどのニーズと見事にマッチしていることが確認できます。
では、そもそも人は眼鏡を何に、どのくらい使っているのでしょうか。

 

3.眼鏡の利用状況

図5 眼鏡を使うシーン(度あり)

図6 眼鏡を使うシーン(度なし)

 

人が眼鏡を使うシーンは、度ありと度なしで異なります。
視力矯正が主たる目的である度ありでは、3割以上の人が起きている間ほとんど着用。度なしではブルーライトカットを目的としたパソコンの利用時が最も多いことがわかっています。
続けて、眼鏡の使用頻度を見てみましょう。

 

図7 眼鏡の使用頻度(度あり)

図8 眼鏡の使用頻度(度なし)

 

眼鏡の使用頻度は、やはり度ありの人のほうが圧倒的に多いことが再確認できます。なお、度なしであっても、約4割の人が日常的に使用していることから、ファッションアイテムやブルーライトカットなど目を保護するというライフスタイルの定着も読み取ることができます。

 

4.眼鏡の再定義

 

ここまで、眼鏡のニーズ、それに応える眼鏡の種類、そして眼鏡の利用目的や使用頻度を見てきましたが、こうした既存の条件内で新しい眼鏡を生み出すことは非常に困難です。
そこで、冒頭で述べた通り、眼鏡を再定義することを試みます。
まず今現在の眼鏡の定義を確認してみましょう。

 

 

眼鏡の定義は3つ。眼鏡本来の目的である「視力を調整するツール」、そして眼鏡=身につけるものという観点から生み出された「ファッションアイテム」、3つめが身体の一部を守るものという「眼を保護するアイテム」です。この3つとは別に新たな定義としてどのようなものが考えられるでしょうか。そのために、定義をもう少しシンプルにしてみましょう。

 

図10 眼鏡の定義_簡略

 

眼鏡の定義を単純化すると、「見る」「身につける」「守る」という3つの動詞に置き換えることができます。この3つの定義のうち、別の可能性が隠れているものはどれでしょうか。

 「身につける」と「守る」から二次的な意味は見いだせません。
(この2つの動詞の目的語は“身体”しかない)

残るのは眼鏡本来の役割でもある「見る」です。

 

図11 「見る」の種類

 

そもそも「見る」といっても少なくとも2種類があります。
1つは、受動的な「見る」。つまり「見えていればOK」。眼鏡本来の役割である「視力矯正」がここにあてはまります。
そしてもう1つが「見えているだけでは不十分」。つまり、能動的な「見る」です。ただ、見えているだけでは十分ではないという状態、状況です。
そのような状況にはどのようなものが考えられるでしょうか?

人が日常生活を送る際には、いわゆるONとOFFがあります。
つまり、仕事や学業=ON、家での家事や休み=OFFです。

能動的な「見る」を求められるのはいずれかといえば、自ずとONです。
仕事や学業の際にこそ、能動的に見なければならない状況があることは容易に想像できます。そして、それは多くの場合、「問題を抱えている状態」であることが類推されます(何の問題もなければ、OFF状態と同じ)。

では、仕事や学業において発生しうる問題にはどのようなものがあるか。
確認してみましょう。

 

表3 ONにおける悩み

 

仕事や学業における悩みには、仕事や学業そのもののほか、キャリア・進路、人間関係などかなりの部分で似ていることがわかります。
この一覧の中で、「見る」ことと関係するものを抽出してみましょう。

 

表4 ONにおける悩み_02

 

残るのは、仕事や学業自体の取り組み方です。
(人間関係やキャリア・進路といったものと見ること=眼鏡との接点は見いだせません)

能動的に「見る」=集中力というキーワードがここから類推することができます。

 

参考.一般的な眼鏡とJINS MEMEのプロダクト3層モデル

【一般的な眼鏡】

【JINS MEME】

 

まとめ

思考のフローチャート