原価率40%でも急拡大!「鰻の成瀬」から学ぶ高収益ビジネスモデルの作り方

飲食業界は競争が激しく、特に食材の原価高騰や人手不足が深刻です。しかし、そんな逆風の中で、ある一社のフランチャイズチェーンが驚異的なスピードで店舗数を伸ばしています。
それが、「鰻の成瀬」です。
彼らの成功の裏には、一見高すぎると思える原価率をものともしない、緻密に設計された「ローコスト・ハイリターン」の会計戦略が隠されていました。
本記事では、「鰻の成瀬」のビジネスモデルを会計の視点から解剖し、あなたの新事業に活かせる成功のエッセンスを抽出します。
成功の核心:高原価率を打ち消す「二大コスト削減戦略」
「鰻の成瀬」のうな重は、一般的なうなぎ専門店よりもリーズナブルな価格設定で提供されています。そのため、食材にかかる売上原価率は40%程度と、一般的な飲食店(30%前後)と比べて高めです。しかし、彼らはこの高い原価率を、売上原価以外の費用(販管費)を極限まで抑える戦略でカバーしています。
1. 徹底的な「廃棄ロス削減」による原価の安定化
事業の初期段階で陥りがちなのが、「仕入れすぎ」「作りすぎ」による廃棄ロスです。これは会計上、そのまま売上原価を押し上げ、利益を削ります。鰻の成瀬はこれをどう解決したのでしょうか?
職人レス・セントラルキッチン方式の採用
うなぎの捌きや焼きの工程は本部(または提携工場)が行い、加工済みの蒲焼を店舗に納品します。これにより、店舗での捌きミスによる歩留まりロスや、職人技術の差による品質バラつきをゼロに。結果、原価が安定し、利益計算が極めて正確になります。
メニューの極限までの絞り込み
メニューを「うな重」に特化することで、仕入れ品目を最小限に抑え、複雑な在庫管理や過剰在庫によるロスを防いでいます。
【ビジネスへの教訓】
「高価な食材」を扱うなら、店舗での手作業を減らし、セントラル管理で原価と品質を安定させる仕組みを設計せよ。
2. 驚異の「人件費削減」による販管費の圧縮
飲食店の経費構造において、人件費は家賃と並ぶ最大の固定費です。成瀬はこの人件費を劇的に下げています。
高付加価値人材の排除(職人不要)
専門的なスキルを持つ高賃金の職人を店舗に置く必要がなくなり、アルバイト中心の低コストオペレーションが実現。高い賃金を払う代わりに、マニュアルとオペレーションの仕組みに投資しています。
「アイドルタイム」を削った短時間営業
多くの店舗が昼と夜のピーク時間のみの営業に限定。これにより、客の少ない「アイドルタイム」に発生する遊休労働力(売上を生まない時間の人件費)を大幅にカットしています。
【ビジネスへの教訓】
人件費を変動費化し、売上が見込めない時間帯の固定費発生をゼロにせよ。仕組みで人のスキルを代替せよ。
フランチャイズ(FC)オーナーが殺到する「投資回収力」
この二大コスト削減戦略の結果、「鰻の成瀬」の店舗は、高い営業利益率(15%~20%)を確保できる構造になっています。そして、これがオーナーにとって最も魅力的な「投資回収期間の短さ」に繋がります。
初期投資の抑制
「目的食」であるうなぎは立地を選ばないため、高額な一等地を回避。
また、居抜き物件を積極的に活用し、初期投資額を700万~800万円程度に抑制。
驚異の投資回収
高い営業利益率を維持し、初期投資額が少ないため、多くの店舗で1年前後での投資回収(自己資金回収)が可能となっています。
【会計視点】
この「短期回収モデル」は、リスク許容度の低い個人オーナーや、多店舗展開を狙う企業にとって極めて魅力的な提案となります。
まとめ:新事業成功のチェックリスト
「鰻の成瀬」の成功は、まさに会計と経営戦略を徹底的に統合した結果です。
あなたの新しいビジネスを考える際、以下のチェックリストを参考にしてください。
- 原価を安定化させる仕組みはありますか?(店舗でのロスや失敗を防げていますか?)
- 人件費を「変動費」に近づけていますか?(ピーク時以外の人件費を徹底的に削れていますか?)
- 初期投資は市場平均よりも抑えられていますか?
- あなたのビジネスは、投資回収期間を「1年以内」に設定できる収益構造ですか?
「仕組み」が「人の技術」と「高コスト」を代替する。これこそが、現代のフランチャイズ成功モデルの鍵です。ぜひ、あなたのビジネス設計に活かしてください。
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