ビジネスモデルとは何か。10分でわかるビジネスモデル入門_【2020_07_17】大幅加筆修正

ビジネスモデルとは何か。10分でわかるビジネスモデル入門_【2020_07_17】大幅加筆修正

ビジネスモデルについて、わかりやすく説明されているものがなかなかありません。

多くは大手企業のモデルの説明であったりするに留まっています。
そこで入門編として、ビジネスモデルそのものについて簡単にご紹介します。
10分程度でさっと読めるので、ぜひ参考にして下さい。

1.ビジネスモデルとは

ビジネスモデルと聞いて、どんな風にイメージされますか?ビジネスモデルとは?と聞くとこんな答えが返ってきます。

・放っておいても売れる仕組み
・今までにないビジネスの仕組み
・マーケティングの一部

などです。
フィナンシャル・ノートでは、ビジネスモデルを次のように考えています。
ビジネスモデルとは、「収益を上げ続ける仕組み」。

なんだ、と思われるかもしれませんが、肝心なポイントは「上げ続ける」です
一過性の集客施策ではなく、何回も繰り返し機能するものを「ビジネスモデル」と考えています

2.ビジネスモデルの構成

様々なことが言われていますが、ビジネスモデルを構成するのは次の3つの機能です。

1)商品やサービスの生成機能
2)売上・回収機能
3)商品やサービスの提供機能

それぞれ一体どんなものなのか。
事例を交えながら順に説明していきましょう。

2−1. 商品やサービスの生成機能

取扱う商品やサービスをどのように生み出すのか、です。
この機能を構築するための選択肢は2つです。

1) 自社で生成する
2) 外部で生成する

※生成するという表現を使っているのは、製品を製造する場合もあれば、ノウハウなど目に見えないものを具現化したり、情報化したりするビジネスがあるからです。

2−1−1.自社で生成する

どのような商品やサービスであっても、自社や他社が持つノウハウや原材料を使って、生成し、顧客へ提供します。この機能がビジネスモデルを構成する1つめの機能です。

2−1−2.他社で生成する

1)と2)にはどんな違いがあるのでしょうか?
例えば、ファッション業界でよく聞く「ファブレス」と「SPA」。ファブレスは、工場を持たない製造業のこと。一方のSPAは製造小売業のことで自社において製造から小売まですべて行なうスタイルです。

もちろん、この大別はファッション業界だけではありません。最近流行りのWEBコンテンツなども、自社で生成するか、外部に委託するか分かれます。

2−1−3.メリットとデメリット

自社で行なう場合、投資し、機能を構築する必要があります。リラクゼーションサロンのようなサービス業であっても、店舗構築に費用がかかります。
一方で外部を利用する場合、このコストはかからず、決められた「手数料」や「利用料」が発生します。

自社で行なうメリットは、「コストコントロールが行ないやすいこと」生成だけでなく、小売まで行っている場合、価格を調整することが外部を利用していることに比べて、比較的簡単です。

外部を利用するメリットは、「変更しやすいこと」でしょう。ビジネスの形勢が危ぶまれてきたとき、自社で機能を持つことに比べて、短期間で変更や撤退が可能です。
身近な例でいえば、「コンビニ」のフランチャイズ契約。

FCオーナーが持つ土地を利用して、店舗を建設。運営も加盟者が行ないます。業績が思わしくなくても、FC本部は痛くも痒くもありません。すぐさまオーナーを募り、別のエリアに新しい店舗を展開することが可能です。

一方のデメリットはどうでしょうか。
自社で行なう場合、環境の変化や法律改正など自社の努力が及ばない影響が出た場合、自社資産が「重荷」になることでしょう。売却などによる資産の圧縮が必要になります。

外部利用のデメリットは、自社のメリットの逆です。「コストコントロール」がしにくいこと。
円高などの為替の影響や資源価格の高低によって受ける影響だけでなく、外部への「依存度」によってはビジネスそのものが立ちいかなくなる恐れがあります。

2−1−4.中間スタイル

生成機能だけを提供するビジネスモデルです。

自社で作らず、利用者に製品を作る機能を提供する方法です。スマホ経由でハンドメイドアクセサリー製作の機能提供や、3Dプリンターなどの貸し出しなど。いわゆる、「インフラビジネス」です。

商品売買で対価を得るのではなく、

・機能の貸し出し
・貸し出した機能で作られた商品の販売手数料

によって利益を得るスタイルです。

2−1−5.生成機能5つのパターン

生成機能は次の5つのパターンが考えられます。

・自社で作って、自社で売る
・自社で作って、他社に売ってもらう
・他社で作って、自社で売る
・自社で作る機能を提供する
・自社で作る機能を提供して、他社に作ってもらい、自社で売る

もちろん、それぞれメリット・デメリットがあります。残り2つの機能と組み合わせながら、最適解を見つけましょう。

2—2.売上・回収機能

提供された商品・サービスに対して、何をどのように回収するか、です。

2−2−1.回収の対象

回収の対象になるのは、2種類。「キャッシュ」と「非キャッシュ」です。

キャッシュはいうまでもありませんよね。
残る非キャッシュですが、サービスの対価として得たものを使って、換金するスタイルがあります。例えば、WEBサイトのアクセス数です。

WEBサイトで無料のサービスを提供し、アクセス数を稼ぐ。そして、広告収入を得る。間接的に回収するスタイルです。WEBコンテンツや、アンケート収集などがこれに当てはまります。

これ以外にもシェアハウスの入居者を用いて、人材紹介会社などから対価を得るといった方法などもあります。

2−2−2.回収方法

回収方法も2週類です。先程の項目と重なる部分がありますが、「直接」と「間接」です。提供した先から直接もらうか、間接的に得るかです。

間接回収は、金額的、心理的の両面から利用者への負担を減らすことができるメリットがあります。
間接的な回収方法には、

・クレジットカード会社から回収する
・人材紹介会社から回収する
・従来は無料だった先から回収する(有料の人材紹介業など)
・広告主から回収する
・利用者の売上から回収する
・商品ではなく、会費で回収する(コストコ方式)
・商品ではなく、送料で回収する(アマゾン方式)

といったやり方があります。

2−3.商品やサービスの提供機能

商品やサービスを「どのように」提供するか、です。
提供方法には、都合12種類あります。

このうち、メジャーな5つについて以下ご紹介します。

・貸す
・売る
・売る権利を貸す
・代行する
・預かる

2−3−1.貸す

代表的なものは、「設備」です。
ホテル、カラオケ、銭湯などが当てはまります。これ以外にも、玉を貸し出す「パチンコホールや、場所を貸す百貨店やアウトレットモール、個人の荷物を置くスペースを貸し出すトランクルーム。席を貸し出す「航空会社」などの交通機関も当てはまるでしょう。

2−3−2. 売る

さきほどの「貸す」との違いは、「所有権の移転」があるかどうかです。

売るものには、野菜や冷凍食品などの飲食品、家電やパソコンなどの耐久消費財、その他、分譲マンションや車、バイクなど多岐に渡ります。また、こういった商品以外にも、

・権利(利用する権利など)を売る
例)ソフトウェアのライセンス

・ナレッジを売る
例)学校やビジネススクール、英会話学校、カルチャーセンター


・技術を売る
例)理容・美容、ネイルサロン、リラクゼーションサロンなど


・情報を売る
例)新聞や雑誌など

などを売っているビジネスもあります。

2−3−3. 売る権利を貸す

代表的なものが、FCのフランチャイズ契約でしょう。
これ以外にも多くの代理店ビジネスがこれに当てはまります。看板やブランド、システムなどの利用権と商品などを仕入れ販売する権利を「貸し出し」てロイヤルティという形で対価を得ています。

2−3−4. 代行する

代表的なものは、家事代行でしょう。
また、意外かもしれませんが、メディア全般がこれに当てはまります。

例えば、テレビ局。テレビ番組を作り、広告枠を売っています。つまり、スポンサーに代わり、「集客」を代行しているのです。その対価としてスポンサー料を獲得しています。ラジオや新聞、WEBメディアも同様です。

その他、ヤマト運輸に代表される宅配など運送業。これも「代行」です。利用者に変わって、荷物を代わりに届けているからです。

2−3−5. 預かる

金融機関や保険会社がこれに当てはまります。銀行など金融機関は預金として、保険会社は保険料として預ります。

上記5つ以外にも、「転貸・転売」があります。不動産のサブリースや、金券ショップ、中古本などリサイクル商品がこれに当てはまります。

3.ビジネスモデルの「構成要素」

2.でご紹介した、3つの機能を掘り下げると、さらに以下のような8つの要素に分解することができます。

1)ターゲット
これは説明不要でしょう。

2)商品・サービス
1と同様に説明不要でしょう。
ただし、商品は、さらに次の5つに分解することが可能です。

3)価格(課金)
上記、2−2でご紹介した利用料、会費などいわゆるマネタイズの方法です。

4)提供条件
提供するための「条件」、つまり時間・場所・数量を指しています。
時間は、どの時間帯、例えば週末、24時間、夕方以降など。
場所は、WEBか店舗か、それともSCかなど。
数量は、商品やサービスのボリューム、つまり数量を表しています。

5)提供形態

2−3でご紹介した「提供機能」です。
例えば、人材紹介業なら、「仲介」。塾で学生に受験を教えるなら「教育」という具合です。

6)資産
資産とは、商品やサービスを提供するために必要となるもののことです。
例えば、ホテルなどの宿泊ビジネス。
ハードウェアとして宿泊施設が不可欠です。
予め用意された宿泊施設によって、サービスが提供可能となります。
WEB上で提供されるものも同様です。
サイトがあり、物流・倉庫機能が揃ってはじめて、商品を提供することが可能になるのです。

7)サプライヤー
商品やサービスの材料となるものを提供してくれるプレイヤーのこと。
小売業におけるメーカーや卸です。メーカーや卸から商品を仕入れ、店頭に並べることで初めて、商品を提供する(販売する)ことができます。
サプライヤーは、仕入企業だけではありません。例えば、クラウドワークなどでノウハウを提供してくれる専門家などもサプライヤーに当てはまります。
商品に代わり、ノウハウを仕入れる。そういうイメージです。

8)ビジネスプロセス
いわゆる、バリュー・チェーンのこと。例えば、

といった具合です。

4.ビジネスモデルの目的

4−1.他社との差別化

単純に「商品やサービス」だけではすぐにマネをされてしまいます。新製品でマネをされないものは、再生医療などごく一部の特殊な最新技術ぐらい。それ以外のほとんどのものは時間さえあれば、間違いなくマネされます。

なお、マネされないようであれば、反対にキケンです。その市場には顧客がいないということを示しているからです。

4−2.どのように差別化すればよいか

では、どのようにして差別化すればいいのか。そのためにビジネスモデルがあります。ビジネスモデルを用いた差別化とは、

ビジネスの仕組み全体によって、他社との違いを生み出すこと

です。

わかりやすい例でいきましょう。
東京23区内に配達ネットワークを張り巡らせているディスカウントストアの「カクヤス」。
23区内であれば、どこでもピザ屋のように30分以内でお酒を配達するというビジネスモデルを構築しています。

カクヤスと一般的な酒屋との違いは何でしょうか?
値段の違いはありますが、取り扱う商品そのものは同じです。しかし、23区内限定とは言え、一般的な酒屋がカクヤスのように、届けることはできません。届けるための仕組みを持っていないからです。

では、この仕組みを今から構築することができるか、といえばまず不可能です。

仮にできたとしても、ようやくそれで同じ土俵に乗れただけ。商品も同じ、ビジネスモデルも同じとなれば、あとは「価格競争」のみ。体力のある方が勝つだけ。消耗戦です。

カクヤス以外の酒屋が酒販業界で生き残るためには、違うビジネスモデルを構築する必要があるのです。

5.ビジネスモデルの発想

ビジネスモデルを用いてビジネス全体で差別化を図るということはわかった。では、肝心のビジネスモデルはどのように考えればいいのか。

実は、新しいビジネスモデルは、次の3つのパターンしかありません。

・新しい実現手段
・新しい目的
・新しい価格体系

順に説明していきましょう。

5−1.新しい実現手段

既存のビジネスで提供されている商品やサービスを別の、新しい手段で実現するビジネスモデルです。

さきほどのカクヤスもここに当てはまります。カクヤスが用いた実現手段。それは、ヤマト運輸が宅配便で構築した方法と同じなのです。つまり、

酒販店✕新しい実現手段=ヤマト運輸の「宅配方式」

というビジネスモデルなのです。
これ以外にも、身近な例として、インターネットを使った「オンライン方式」があります。英会話やカウンセリングなど、これまでアナログ、対面式で行われていたものをインターネットという新しい実現方法で置き換え、結果価格を下げ、利便性の向上を図ったものです。

・英会話✕オンライン → スカイプを使った格安英会話
・クリーニング✕オンライン → スマホで頼めるクリーニング
・婚活✕スマホ → スマホの画面で婚活相手と話ができるサービス

インターネットを用いない方法でも、

・葬儀✕自宅(新しい実現手段) → 自宅葬

や、

居酒屋✕出会い → 相席屋

といったビジネスモデルもあります。
最近では、人工知能(AI)、ロボット、チャットボット、ドローンなどがここに当てはまります。つまり、

・人工知能✕お見合い  
例)人工知能を使ったお見合いサービス
・ロボット✕ホテル   
例)業務をロボットが行なう「変なホテル」

といった感じです。
注意したいのは、あくまで「手段」を変えただけ、ということ。商品やサービスそのものを変えたわけではないのです。

5−2.新しい目的

既存のビジネスが持つ本来の目的とは別に新しい目的を付与するタイプです。例えば、心霊スポットを回る「心霊スポットツアータクシー」。

本来、タクシーは利用者が決めた場所へ最短で移動するサービスです。ツアーで様々な場所めぐるのは、明らかに「早く移動する」目的とは異なります。

しかし、このように新たな目的を付加することで、確実に競合他社との差別化を実現することができます。

心霊スポットタクシー以外にも、
・DVDの販売をするクリーニング店
・著者育成プログラムを提供する書店
・宿泊施設を持つ高速道路のサービスエリア

などもあります。

5−3.新しい価格体系

既存のビジネスを含む、その業界でよく用いられている価格体系とは別の体系を持ち込むことです。

例えば、100円ショップ。
これは、既存の小売店、スーパーに対してすべて100円という新しい価格体系を持ち込んだものです。他にも、

・会費婚 → 結婚式場✕新しい価格体系
・3プライススーツ → 紳士服✕新しい価格体系

といったビジネスモデルがあります。

6.まとめ

ビジネスモデルとは何か、目的やその構成要素、発想の方法などについてご紹介してきました。
以下、まとめです。

1.ビジネスモデルとは

商品やサービスだけではなく、それを提供するビジネス全体で「差別化」し、継続的な収益を獲得する仕組みのこと。

2.ビジネスモデルは次の3つで構成される

1)商品やサービスの生成機能
→ 自社もしくは外部を使う。それぞれにメリット、デメリットがある。

2)売上・回収機能
→ 回収する対象には、お金とお金以外のものがある。
→ 回収方法にも、「直接」と「間接」の2種類がある。

3) 商品やサービスの提供機能
商品やサービスの提供機能には12種類ある。

3.構成要素はさらに8つに分解できる

商品はさらに、5つに分解できる。

4.新しいビジネスモデルは、既存のビジネスに次の3つのいずれかまたは複数かけ合わせたものである。

・新しい実現手段
・新しい目的
・新しい価格体系