【題材:みんなのスーツ】アイデアの出し方~成功のロジック~
- 2026.04.20
- 成功のロジック

発売からわずか3か月で2万着。
オフィスカジュアルが広がり、スーツを着る人が年々減っていく中、洋服の青山が2025年11月に発売した「みんなのスーツ」が売れています。
特徴は3つ。12,980円という低価格、ウォッシャブルなどの機能性、そしてS・M・L・LLなどカジュアル衣料と同じサイズ表記です。
なぜ売れたのでしょうか?
安いから?低価格スーツは20年以上前から存在しています。
ウォッシャブルも同様です。
発想の肝、成功のカギは「SML方式」。
スーツのサイズ表記は「体型(Yなど)」と「号数(3など)」の組み合わせる独自の方式。これをカジュアル衣料と同じ方式にしたことでスーツを敬遠していた層に刺さりました。
カジュアル衣料の要素を、スーツに転用した。
このポイントを見つけ出すためには、どのように考えればいいのか。
この思考プロセスをご紹介します。
全体像
この記事は以下の3項目で構成しています。文字数は1500文字ほど。
5分もかからず「成功の肝」を捉えることができます。
1.スーツの構成要素(顧客視点)
2.各要素に紐づくペインとゲイン
3.サマリー
1.スーツの構成要素
スーツを顧客視点で分解すると、
1)価格
2)デザイン(色、サイズ、種類)
3)機能性
の3つに分解することができます。
これらの視点に結びつく顧客のペインとゲインを洗い出します。
2.各要素に紐づくペインとゲイン
1)価格
物価高の折、できるだけ安く済ませたいというペインは間違いなくスーツにも当てはまります。ただし、1999年株式会社オンリー(京都)の「ザ・スーパースーツストア」の登場以降、大手チェーンも追随し、低価格スーツ市場は確立済です。
しかし、スーツ市場は明らかに縮小傾向。「安さ」は売上増の「必要条件」に過ぎず、「十分条件」ではないことがわかります。
図1 紳士服大手7社の売上合計推移

2)デザイン
デザインには色、サイズ、種類の3つの顧客観点があります。
a.色
スーツに用いられる色は、一部例外的に芸能人が着用するものを除き、黒や紺などの「寒色系」で構成されているのが一般的です。
色について、ペインやゲインは存在するでしょうか。
カジュアル衣料と同様に、明るい色のスーツを着てみたいというゲインがあることは間違いなさそうですが、もし、それがビジネスとして成り立つなら既に市場もしくはカテゴリーとして存在していなければなりません。
現時点でないということは、白いたいやきと同様の「疑似ゲイン」であると考えて差し支えないでしょう。(顧客は欲しいというが、実際には買わない)
b.サイズ
日常で着用する服は、ある程度合っていれば問題ないですが、スーツは「社会性」が求められる衣服であるため、個人の好みよりも集団の一部としての整合性が優先されます。
つまり、着やすさよりもとにかく「合わせる」。
個人の感情<<社会性という図式です。
ここにペインが隠れていることは明らかです。
なお、オーダースーツは、このペインに対する解決策の1つですが、高価格という別のペインを派生させてしまいます。
c.種類
スーツの種類は、冠婚葬祭など目的別にフォーマル、ビジネス、カジュアルの3つがありますが、これは紙をカッターで切るか、手で切るか、それともハサミで切るかと同じく、この「選ぶ」という行為自体にペインもゲインも存在しません。(発生するのは、実際に手段を選んで切るとき、例えばハサミで段ボールを切るときに「切りにくい」など)
3)機能性
現在のスーツ市場ではウォッシャブルなどさまざまな機能が提供されています。

しかし、いずれも既存の競合が塗りつぶしており、ここにはゲインやペインが残っていないと考えるのが妥当です。
3.サマリー
ここまでの掘り下げをまとめると以下の図の通りです。

掘り下げた内容に沿って、ペイン&ゲインが存在していないパーツをグレーダウンすると、
スーツのサイズが残ります。

- 前の記事
新規事業の罠:Amazon Goはなぜ『販管費の怪物』と化したのか?――会計視点で解剖する失敗の本質 2026.02.26
- 次の記事
記事がありません