【会計で斬る】「みんなで大家さん」はなぜ失敗したのか? 危険な兆候と自転車操業のカラクリ

【会計で斬る】「みんなで大家さん」はなぜ失敗したのか? 危険な兆候と自転車操業のカラクリ

テレビCMなどで高い知名度を誇った不動産クラウドファンディング「みんなで大家さん」。高利回りを謳い、多くの投資家から巨額の資金を集めましたが、近年になって分配金の支払い遅延など、深刻な問題が表面化しています。

この問題の根っこには、会計や財務の構造的な問題が潜んでいます。この記事では、決算書から見える「みんなで大家さん」の危険なカラクリを、わかりやすく解説します。

1. 「高い利回り」の裏側で見えた”自転車操業”の兆候

みんなで大家さんが約束していた高い利回り(年7%など)は、投資家にとって大きな魅力でした。しかし、この高利回りを「どうやって捻出していたのか?」という点が、会計視点での最大の疑問点でした。

資金繰りの危機:現金不足で分配金を支払い続ける構造

決算書を分析した専門家からは、以下のような危険な兆候が指摘されていました。

・現金を上回る支払い
会社が手元に持っている「現金」よりも多い金額を、投資家への分配金として支払っている状態が見られました。

・新規資金で穴埋め
本来、分配金は不動産の賃貸収益など事業の利益から支払われるべきです。しかし、事業が生み出す利益だけでは足りず、新しく集めた投資家からの出資金を、古い投資家への支払い(分配金や元本償還)に充てている疑いが濃厚になりました。

これは、まさに「自転車操業」です。新しい出資者がいる限りは表面上回りますが、資金の流入が途絶えると、すぐに支払いができなくなり、事業が破綻(スキーム破綻)します。実際に、新規募集が難しくなり始めたタイミングで、分配金の遅延が発生しました。

2. 資産が「見かけ倒し」? 膨らんだバランスシートの裏側

会社の財務状況を示すバランスシートにも、実態と会計上の数字が乖離している可能性が指摘されています。

資産を過大に「見せかける」疑い

会計の世界では、会社の「資産」がどれだけの価値を持つかが重要です。しかし、「みんなで大家さん」の運営元については、以下のような点が指摘されています。

・関連会社間の不自然な取引
会社のグループ間で、価値が低い土地などを実勢価格よりもはるかに高い値段で売買したように見せかけることで、会社の資産額を会計上、大幅に水増ししている疑いがあります。

・「見せかけの資産」のリスク
たとえば、10億円の価値しかない土地を1,000億円で計上すれば、バランスシート上の資産は膨らみます。しかし、実際に売却しようとしても10億円にしかならず、資産は「見かけ倒し」で中身が空洞という状態になりかねません。

このような手法は、会社の規模が大きく見え、投資家を安心させる効果はありますが、実態が伴わないため、事業の健全性は極めて低いと言えます。

3. 資金ショート寸前! 危険な財務体質のサイン

決算書に現れるいくつかの指標は、会社が「資金ショート」寸前であることを示していました。

特に流動比率の低さは、「近い将来、現金が尽きて、すぐに払わなければならないお金が払えなくなるリスク」を明確に示していました。

まとめ:高利回りの裏に隠された「脆弱な会計構造」

「みんなで大家さん」の失敗は、単なる不動産事業の失敗ではなく、高利回りを実現するために無理を重ねた、極めて脆弱な会計構造に原因がありました。

  • 新規の資金に依存する「自転車操業」
  • 実態を伴わない「見せかけの資産計上」の疑い
  • 資金繰りの厳しさを示す「流動比率の極端な悪化」

投資家にとって大切なのは、「高い利回り」だけでなく、「その利回りが、会計的に見て本当に健全な事業から生み出されているのか?」を見極めることです。高すぎる利回りは、常に「なぜ?」という疑問を持ち、裏付けとなる財務状況をチェックするサインだと覚えておきましょう。