リスケ中に5,000万円無担保の真水を調達した銀行向け資料の3つの勘どころ
- 2024.09.17
- コラム
当時、在籍していた企業の借入金総額は40億。金融機関は11行。
メガから信組まで一通り並んでいました。
リスケに至った理由は法改正。
詳しくは述べませんが、一企業の努力ではどうにもならない事情でした。
にもかかわらず、リスケ交渉開始直後、銀行引受の私募債償還が迫っていたのです。
償還額は5,000万円。当時、私募債はリスケの対象にならないとされていました。手元資金は言うに及ばずです。
そんな中、償還先の金融機関から5,000万円新たに借り受けることに成功したのです。
どれほどハードルの高いことか、個人レベルで言えば、100万円を10万円ずつ分割返済してもらっている友人から、“返済用の10万円貸してほしい”と言われたのと同じです。
5,000万円、しかも返済用。さらに無担保で借り受けるという、もはや無茶苦茶なリクエストが通ったのは、次に述べる3つの要点を踏まえていたからです。
論証
事業計画書は「なぜ、この事業に投資するべきなのか」、改善計画書は「なぜ、この事業体が復活、改善するのか」という問いに対して、理由、根拠を以って示すことを目的としたテキストコンテンツです。
つまり、「論証」です。クリティカル・シンキングです。
ロジカルシンキングではありません。
反証可能性を丁寧に潰した結果から必然的に内容の正しさを導き出すものであって、自社が設定した条件をクリアしていることを述べるものではありません。
AとB
AとBとは、A=Accounting(会計)、B=Business(事業)のことです。
事業計画書であれ、改善計画書であれ、また銀行向けであれ投資家やVC向けであれ、ほぼすべての資料が、会計、つまり数字とビジネスについて分けて記述されています。
これこれこういうビジネスを展開する。市場はこのくらいだから、数字はこのくらいになるだろうといった具合です。
説明自体は間違いではありません。
ですが、肝心なことが置き去りにされています。
提案する相手、銀行、投資家、VCの方たちは、漏れなく「数字に強い」という点です。
極論ですが、数字自体の説明は不要なのです。
添付資料として渡せば十分です。
求められているのは、この2つ(会計とビジネス、AとB)の有機的な結び付きです。
◯◯という戦略、計画を実施した。その結果は◯◯という数字になる。なぜか。その数字はどことどう繋がっているのか。この数字が変動したら、ビジネスはどう変化するのか。
会計(数字)からビジネスを見たらどうなるのか、ビジネスから会計(数字)を見たらどうなるのか。資金提供者が資料から読み取ることができない点、これを説明する必要が欠かせないのです。
B/S中心
AとBの話題と同様、こうした資料のほぼすべて(ネット上で開示されているものでも)がP/Lベースで記述されています。
いくら売上が立ち、原価はいくらで、コストはいくら。
結果、利益はこうで、何年後には返済(回収)できます・・・。
こちらもこれ自体間違いではありません。
ただ、やはり肝心なことが抜け落ちています。
P/LとB/Sの根本的な性質の違いです。
P/Lは、その期間における資金の「入と出」を表している一方、B/Sは資金使途の「結果」を表すとともに、C/F(キャッシュ・フロー)を同時に表したものであるという点です。
つまり、「入と出」VS「結果」&現預金の流れです。
どちらが、資金提供者にとって重要か改めて述べるまでもありません。
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