現在の発想法では「いいアイデア」が出ない致命的な理由とその解決法
- 2024.12.17
- コラム
いいアイデアを出したいが、いくら考えても「似たようなアイデア」しか出てこない。発想にまつわる「あるある」の1つである。
なぜ、似たアイデアしか思いつかないのか。
それは、
「自分の頭だけで考えている」
からである。
アイデア=自分の頭で考えるものというのは単なる「思い込み」に過ぎない。いいアイデアが出るのであれば、法律に触れない限り、どんな情報に頼っても、どんな場所に行っても、誰に会ってもいいからだ。
そもそも自分の頭だけで考えること自体が無謀である。
何より人間の記憶容量は非常に小さい。
認知科学者である米国ブラウン大学のスティーブン・スローマン教授は、私たちの記憶容量はわずか「1GB」としかないという。(知ってるつもり 無知の科学 ハヤカワ文庫https://x.gd/MwYzy)
1GBを文字数に置き換えると、全角で5.6億字。
原稿用紙140万枚、写真なら2,000枚、動画なら2時間の映画1本分しかない。
今どきはスマホでも8GBを搭載している。
PCなら16GB、映像系を駆使するなら32か64必要である。
メインメモリ1GBのパソコンなんてブラウジングもままならない。
ずっとクルクル回ったままか、処理落ちするかだろう。
自分の頭だけでアイデアを考える限り、似たようなものしか出てこないのはそのメモリの大きさからいって、当然の帰結なのである。
では、どうすればいいのか。
人が最も創造性を発揮するためのいくつか条件があるという。(創造性はどこからくるか 共立出版/日本認知科学会著https://x.gd/k8MFo)
例えば、適度にちらかった机、75db程度の騒がしさ(カフェくらい)。そして、きっかけである。
水墨画を書いてもらう実験で、あらかじめ紙に絵の一部を書きこんでおくと、被験者の創造に対するモチベーションが大きく向上したことがわかっている。つまり、アイデアを引き出すためには「外部情報」が必要なのである。
今ではすっかり消えてしまったが、昔「イントロクイズ」なるものがあった。曲の冒頭、数秒間を流し、曲名を当てるというものだ。
特徴のあるイントロが流れる。だから、その曲がなにかがわかる。一見、当たり前過ぎることかもしれないが、このヒントなしに、例えば「80年代にバラードで、大ヒットをになった曲は?」と出されたら、答えに窮するだろう。
一つの楽曲のイントロだけ覚えていることはまずない。全体で、サビの部分までなんとなくわかっている。だからイントロが引き金になる。
アイデアも同様である。
自分の頭で考えることはほどほどにして、外部に転がっているヒントを探すほうが良い。しかも、できるだけ多様な、ジャンルを超えたもので、偏らないほうがベストだ。
例えば近年、ビジネスに活かす学問として、文化人類学や生物学が注目されている。分野を超えた「共通点」が見いだせるからだ。マジックテープはゴボウの実の構造から、新幹線はカワセミのくちばしの形状を模倣したのは有名だ。サメの皮膚の表面構造を模倣し、船の抵抗を減らす塗料を開発した例もある。
自分の頭もさることながら、「ビジネス」も決まった範囲があり、ほとんど手垢が付いている。ならば、そこから飛び出して、別次元の知識にアプローチするほうがアイデアにとって有益であることは間違いない。
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