ステーブルコインとは?仮想通貨の安定版をわかりやすく解説!

ステーブルコインとは?仮想通貨の安定版をわかりやすく解説!

「仮想通貨って価格変動が激しくて、ちょっと怖いな…」

そんな風に感じている方も多いのではないでしょうか?ビットコインが1日で何十万円も上がったり下がったりするニュースを見ると、手が出しにくいと感じるのも無理はありません。

でも、もし価格が安定した仮想通貨があったらどうでしょう?

日常の買い物に使えたり、海外送金がもっと手軽になったり…。そんな夢のような存在が、実はもう登場しています。それが、今回ご紹介する「ステーブルコイン」です。

この記事では、ステーブルコインが一体どんなもので、なぜ価格が安定しているのか、そしてどんなメリットや注意点があるのかを解説していきます。

ステーブルコインって、そもそも何?

ステーブルコインは、その名の通り「Stable(安定した)Coin(コイン)」。つまり、価格の安定を目指して作られた暗号資産(仮想通貨)のことです。

一般的な仮想通貨、例えばビットコインやイーサリアムは、需要と供給のバランスで価格が大きく変動します。これが投機の対象になる一方で、「昨日は100円だったものが今日は50円に!」なんてことが起こりえるため、普段使いの決済手段としてはちょっと不便でした。

この「価格が不安定」という仮想通貨の課題を解決するために生まれたのが、ステーブルコインです。

なぜ価格が安定しているの?ステーブルコインの仕組み

では、どうやって仮想通貨なのに価格を安定させているのでしょうか?ステーブルコインにはいくつかの種類があり、それぞれ異なる方法で安定性を保っています。

主な仕組みは以下の3つです。

1. 法定通貨担保型

仕組み

最も一般的で信頼性が高いとされるのがこのタイプです。米ドルや日本円といった法定通貨を裏付けとして、その法定通貨と同額を銀行などの信頼できる機関に預けておくことで、ステーブルコインの価値を担保します。

例えば、代表的なステーブルコインであるUSDT(テザー)やUSDC(USDコイン)は、1USDT(または1USDC)が常に1米ドルの価値に連動するように設計されています。発行元の企業は、発行したUSDTやUSDCと同額の米ドルを、実際に銀行口座に保有しています。

イメージ

まるで、銀行に預金されたお金をデジタル化したようなイメージです。あなたが1000円札を銀行に預けると、通帳に1000円と記帳されるのと同じように、発行元が米ドルを預かることで、その分のステーブルコインを発行している、と考えてみてください。

メリット

安定性が高い
実際に価値のある法定通貨に裏付けられているため、比較的価格が安定しています。

分かりやすい
仕組みがシンプルで理解しやすい。

デメリット・注意点

発行元の信頼性
発行元が本当に申告通りの法定通貨を保有しているか、透明性が確保されているかが重要です。もし発行元が不正をしたり、預かっていた法定通貨が不足したりすると、価値が下がるリスクがあります。

中央集権的
中央の管理者が存在する点で、仮想通貨本来の「非中央集権性」とは少し異なります。

2. 暗号資産担保型

仕組み

ビットコインやイーサリアムなどの他の仮想通貨を担保にして発行されるタイプです。
このタイプのステーブルコインは、担保となる仮想通貨の価格変動に耐えられるよう、通常は発行するステーブルコインの価値よりも多めに(過剰に)担保を預けることで安定性を保ちます。

例えば、100ドルの価値を持つステーブルコインを発行するために、200ドル分のイーサリアムを担保に入れる、といった形です。担保の仮想通貨の価格が多少下がっても、ステーブルコインの価値は保たれるよう設計されています。

メリット

分散性が高い
法定通貨担保型とは異なり、特定の企業や銀行に依存せず、プログラムによって管理されることが多いです。仮想通貨が目指す非中央集権的な思想に近いと言えます。

透明性が高い
担保状況などがブロックチェーン上で公開されている場合が多く、透明性が高い。

デメリット・注意点

担保の仮想通貨の価格変動
担保となる仮想通貨の価格が急落し、過剰担保の範囲を超えてしまうと、ステーブルコインの価値も影響を受ける可能性があります。その際、担保を自動的に売却して価格を維持する仕組み(清算)が働くこともあります。

仕組みが複雑
法定通貨担保型に比べて、仕組みがやや複雑で理解しにくい場合があります。

3. アルゴリズム型(無担保型)

仕組み

特定の担保資産を持たず、プログラム(アルゴリズム)によって供給量を自動的に調整することで価格を安定させようとするタイプです。

例えば、ステーブルコインの価格が目標価格(例えば1ドル)よりも上がったら、プログラムが自動的に新しいステーブルコインを発行して市場に供給し、価格を下げます。逆に、価格が下がったら、流通しているステーブルコインを買い戻したり、燃焼(バーン)したりして流通量を減らし、価格を上げます。

メリット

担保資産が不要
大量の担保資産を保有する必要がないため、効率的な運用が期待されます。

完全に分散化
理論上は完全にプログラムのみで動作するため、非中央集権性が高い。

デメリット・注意点

安定性のリスクが高い
市場の急激な変動やプログラムの設計ミスなどにより、価格の安定が保てなくなるリスクが他のタイプに比べて非常に高いです。実際に、このタイプのステーブルコインが大きく暴落し、多くの損失を出した事例もあります。

仕組みが最も複雑
理解するのが難しく、想定外の事態が起こった際のリスクを予測しにくいです。

ステーブルコインのメリット

ステーブルコインがなぜ注目されているのか、その主なメリットを見ていきましょう。

1. 価格が安定している

これが一番のメリットです。価格が常に一定なので、「今日はいくらになるんだろう?」と心配することなく、普段の買い物や送金に安心して使える可能性を秘めています。

2. 送金が速く、手数料が安い

ブロックチェーン上で取引されるため、銀行を介した国際送金に比べて、はるかに早く、そして安価に送金できます。数日かかっていた送金が数分で完了し、数千円かかっていた手数料が数十円で済む、なんてことも珍しくありません。国境を越えたビジネスや、海外に住む家族への送金など、様々な場面で活躍が期待されます。

3. 世界中で利用可能

インターネット環境さえあれば、どこにいても送金や受け取りが可能です。特定の国の金融システムに縛られることなく、グローバルに価値を移転できるのが強みです。

4. 仮想通貨の「避難先」

ビットコインなどの価格変動が激しい仮想通貨を保有している投資家にとって、ステーブルコインは「資産の避難先」としても機能します。

市場が不安定になった時に、一度ステーブルコインに交換しておくことで、急激な価格下落から資産を守ることができます。再び市場が安定したら、他の仮想通貨に交換し直す、といった戦略も可能です。

5. DeFi(分散型金融)の基盤になっている!

DeFi(ディーファイ)とは、ブロックチェーン技術を用いて、銀行や証券会社といった中央集権的な管理者を介さずに金融サービスを提供する仕組みのことです。

ステーブルコインは、このDeFiの世界で非常に重要な役割を担っています。例えば、DeFiのレンディング(貸付)やイールドファーミング(利回りを得る)などでは、価格が安定しているステーブルコインが頻繁に利用されています。

ステーブルコインのリスク

メリットが多いステーブルコインですが、もちろん注意すべき点もあります。

1. 発行元の信頼性と透明性

特に法定通貨担保型の場合、発行元が本当に担保資産を適切に管理しているかどうかが非常に重要です。監査報告書を公開しているか、透明性の高い運営を行っているかなどを確認する必要があります。過去には、担保資産の透明性が不十分だと批判されたステーブルコインもありました。

2. 「ペッグ」が外れるリスク

ステーブルコインは、特定の価値(例:1ドル)に連動(ペッグ)するように設計されていますが、何らかの理由でこの連動が外れてしまい、価格が大きく変動する可能性があります。特にアルゴリズム型ステーブルコインでは、この「デペッグ(ペッグが外れること)」による暴落事例が報告されています。

3. 法規制の動向

世界各国でステーブルコインに対する法規制の整備が進められています。日本でも、ステーブルコインは資金決済法の対象となり、「電子決済手段」として分類され、発行者や仲介業者にライセンスが必要になるなど、厳格なルールが適用されています(2023年6月施行)。これらの規制の内容によっては、今後のステーブルコインの利用方法や入手方法に影響が出る可能性があります。

4. ハッキングやスマートコントラクトの脆弱性

他の仮想通貨と同様に、ステーブルコインもブロックチェーン上で動いています。そのため、発行元のシステムがハッキングされたり、ステーブルコインを管理するスマートコントラクト(自動契約プログラム)にバグや脆弱性があったりすると、資産が失われるリスクもゼロではありません。

まとめ:ステーブルコインは「仮想通貨と法定通貨のいいとこ取り」

ステーブルコインは、仮想通貨の持つ「速くて安い送金」や「グローバルな利用可能性」といったメリットと、法定通貨の持つ「価格の安定性」を兼ね備えた、まさに「仮想通貨と法定通貨のいいとこ取り」をしたような存在です。

特に、国際送金やオンラインでの決済、そしてDeFiのような新しい金融サービスでは、その安定した価値が非常に重宝されています。

しかし、その裏にある仕組みや、発行元の信頼性、そして価格が安定しているといっても「絶対に大丈夫」ではないリスクがあることも理解しておくことが重要です。