【成功のロジック】子ども起業塾

トミカプレミアム。専用の金型を用いて、ディテールまでこだわり抜いた、
大人向けのトミカです。もはや、子どもが遊ぶミニカーのそれではありません。大人の鑑賞に耐えるアート作品の世界観を持つ商品になっています。
本来ミニカーは、子どもが対象です。その対象範囲を外れ、大人向けにしたことで今や1つの確固たる商品カテゴリーになっているのです。
今回の題材も同様です。「子ども起業塾」。
起業は本来、社会人向けのもの。それをあえて、対象ではない子ども向けに切り替えた。果たして、どのように考えればこのような「新しい塾」が思いつくのか、学習塾を起点に掘り下げていきます。
1.市場と競合
図1 学習塾市場と上位プレイヤー

学習塾・予備校の市場規模はそれほど大きくなく、5,500億円ほど。しかし、参入障壁が低いことから、プレイヤーがひしめき合っています。上位10社の売上合計でも市場の50%を超えていません。
図2 学習塾の売上高推移

出典:経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」
経済産業省の特定サービス産業動態統計調査によると、学習塾市場は緩やかに右肩上がりを続けており、ニーズの底堅さ、ビジネスとしてのポテンシャルの高さを伺うことができます。ただ、一方で上述の通り、参入障壁が低いため、市場からはじき出されてしまうプレイヤーも市場の拡大に比例するように増えている傾向も伺えます。(図3)
続けて、学習塾に対する一般的なニーズを確認しておきましょう。
図3 学習塾の倒産数

出典:東京商工リサーチ
2.ニーズと問題
図4 学習塾に求められるニーズ

学習塾に対する主なニーズは、いかに学力向上に集約され、必要な対策、苦手科目の克服や、集中力の向上、個別指導といったきめ細かい対応が望まれていることが確認できます。
残念ながら、すべて既存のプレイヤーによって解決済であり、余白は残っていません(以下図5)。視点を変え、学習塾が抱える問題点を確認してみましょう。
図5 学習塾の形態

表1 学習塾が抱える問題点

学習塾が抱えている問題には、外部環境の変化によるものと内部的な課題に分類することができます。このうち、もっとも強く目を惹くのが少子化です(表1)。教育改革やオンライン授業といった要因は自社で対応可能ですが、少子化とそれに伴う競争激化を回避することには限界があります。
図6 18歳人口の推移

出典:文部科学省「学校基本調査」
学習塾に対するニーズ、問題いずれも対応可能な項目はすべてクリアされているため余白が残っていません。視点を変えて、「学習塾」という枠を離れ、視点を拡大してみましょう。
3.視点の拡大
図7 視点の拡大

学習塾を抽象化すると、上記の図のようになります。学習塾は習い事の1つに属しており、さらに、子ども向けや大人向けといったカテゴリーがあります。
入試や学校の成績といった特定の範囲ではなく、そもそも子どもに対して、親は何を習わせたいのか、つまり、「何かを習う」という視点で捉えなおしてみましょう。
図8 どんな習い事をさせたいのか

出典:株式会社イーラーニング研究所
「2023年:年末年始の学習と過ごし方に関する調査」
株式会社イーラーニング研究所が発表した「2023年;年末年始の学習と過ごし方に関する調査」によると、親が子どもに習わせたいことでは「英会話」「プログラミング」が突出し、そして「スポーツ」が続いています。学習塾はさらにその下位グループに属しています。
一昔前にあった「いい学校に行って・・・」というステレオタイプは影を潜め、英会話やプログラミングといった社会で通用する実践的な能力を伸ばさせたいということが読み取れます。
この点は、大学進学率の上昇に比例して、進学先の選択や受験方法にも現れており(図9、10、11)、学力優先のイメージが薄れていることがわかります。
図9 進学先検討の重視点

「⾼校⽣と保護者の進路に関する意識調査2023」リクルート『キャリアガイダンス』調べ
図10 大学進学率(%)

図11 総合選抜式の受験者数

出典:文部科学省「入学者選抜実施状況」
子どもに身につけさせたいこと=学力ではなく、より実践的なもの、社会に出てから通用する力、スキルだとすると、子ども向けに提供されている現行の習い事では対応しきれていないことは自明です。
そこで、子ども向けではなく、大人向け、社会人向けに提供されている「習い事」に目を向けてみます。その前に、子ども向けの習い事にはどのようなものがあるのかを確認しておきましょう。
4.習い事の比較
表2 子ども向けの習い事

子ども向けに提供されている習い事は大きく5つ。「スポーツ系」「学習系」「音楽系」「芸術系」そして、料理教室や手芸教室といった「その他」です。昔からあるそろばん塾のほか、ダンスといった比較的最近のものが並んでいます。続けて、大人向けの習い事を確認してみましょう。
表3 大人向けの習い事

大人向けの習い事における中心は、やはり「仕事」に直結するものです。次に続くのが自己成長、そして、余暇的なものが最後にきています。自己成長も社会で通用する能力向上を前提としたものと捉えると、ほとんどが「実践的」なもので占有されていることがわかります。
続けて、大人向けと子ども向けの比較を進めながら、子ども向けに転用可能なものを探ってみましょう。
表4 大人向けと子ども向けの比較

両表を比較すると、子ども向けのうち、学習塾を除いてすべて大人向けで提供されていることがわかります(グレーダウン)。残ったもののうち、さらに絞り込みを続けます。
表5 大人向けの習い事(抽出分)

グレーダウンしたもののうち、公認会計士や税理士といった年齢制約があるもの、瞑想や読書会といった直接的な実践性を持たないものを除くと、「ビジネススクール」と「デザイン」が残ります。このうち、ビジネスとして明らかに未展開のものは「ビジネススクール」です。
参考.一般的なビジネススクールと子ども向け起業塾のプロダクト3層モデル
一般的なビジネススクールのプロダクト3層モデル

子ども向け起業塾のプロダクト3層モデル

まとめ
思考のフローチャート

- 前の記事
【2026年版】「お寺×ビジネス」の勝機はどこにある?既存の枠を超えた4つの新領域 2026.01.15
- 次の記事
【新規事業のヒント】Z世代を狙う「1プッシュ販売」?香水自販機ビジネスの可能性 2026.01.19