紙のブロック「CUBLOX®」に学ぶ、事業化に耐えるアイデアのつくり方

新規事業を考える立場にいると、「新しさ」と「実行可能性」の両立に悩むことが少なくありません。斬新だが成立しない。成立しそうだが新しくない。その間で多くのアイデアが消えていきます。
そのバランスを非常にうまく成立させている事例が、創業120年を迎える株式会社市瀬が創ったCUBLOX®(キューブロックス)(https://cublox.jp/)です。
CUBLOX®は、紙でできた組み立て式のブロックです。
平面の紙パーツを6枚組み合わせることで立方体(キューブ)をつくり、そのキューブ同士を連結して、自由に構造を発展させていくことができます。
このプロダクトは、「ブロック=プラスチック」という業界の前提をずらし、体験価値を再設計することで、新しい市場文脈をつくっています。
一見すると小さなプロダクトですが、事業視点で見ると、
・初期投資を抑えられる構造
・複数の市場に横断的に展開できる設計
・モノ売りに留まらない拡張性
といった、新規事業に求められる条件を高いレベルで満たしています。
本記事では、CUBLOX®を単なる成功事例として紹介するのではなく、
「なぜこのアイデアは事業として成立しているのか」
その思考と設計を、起業家・新規事業担当者の視点で分解していきます。
1. 既存市場の前提をどうずらしたか―「ブロック=プラスチック」という暗黙の了解を疑う
CUBLOX®の出発点は、単なる技術革新ではありません。
市場に長年存在していた「前提」を問い直したことです。
ブロック玩具の市場では、長らく次の前提が共有されてきました。
・丈夫であること
・繰り返し使えること
・素材はプラスチックであること
CUBLOX®は、この中でも特に「素材はプラスチックであるべき」という前提だけを、静かに外しました。その結果、
・軽い
・安全
・表現の自由度が高い
・環境配慮と親和性が高い
という、まったく別の価値軸が立ち上がっています。新規事業において重要なのは、市場そのものを壊すことではなく、評価軸をずらすことです。CUBLOX®は、同じ「ブロック」というカテゴリにいながら、競争の土俵そのものを横にずらすことに成功しているのです。
2. 小さく検証できるビジネス設計― 初期投資を抑えた「試せる構造」
新規事業で最も避けたいのは、最初の仮説検証に過剰なコストがかかることです。
CUBLOX®の設計は、この点で非常に合理的です。
・小ロット生産が可能
・在庫リスクが低い
・改良やバリエーション追加が容易
これは、「最初から完璧を目指さなくてよい設計」とも言えます。
実際の事業開発に置き換えると、
・まずは小さく市場に出す
・反応を見ながら改善する
・使われ方に合わせて展開を変える
という、リーンな検証サイクルを回しやすい構造です。起業家や新規事業担当者にとって、この「撤退しやすさ」「方向転換しやすさ」は、成功確率を大きく引き上げる要素になります。
3. BtoC/BtoBを横断できる構造― 顧客を一つに固定しない設計思想
多くの新規事業は、「まずはBtoC」「まずはBtoB」と顧客を固定して考えがちです。
一方でCUBLOX®は、最初から複数の文脈で価値が成立する構造を持っています。
・家庭・個人向け(知育・遊び)
・教育機関向け(教材・ワークショップ)
・企業向け(研修・ノベルティ・イベント)
重要なのは、プロダクト自体を変えずに、価値の語り方を変えている点です。これは、
・市場が想定より伸びなかった場合の保険
・社内での新規事業説明のしやすさ
・段階的な売上構成の転換
といった、実務上の強さにつながります。
新規事業では、
「誰に売るか」よりも「誰にでも意味を持ちうる構造か」
という視点が、後から効いてきます。
4. プロダクトを起点にした事業拡張の余地― モノ売りで終わらない設計
CUBLOX®は、単体で完結しないプロダクトです。ワークショップ、教育プログラム、企業研修、コラボレーション、展示・イベントなど、自然に「体験」へと接続できます。
これは、プロダクトが「道具」ではなく「媒介」になっている状態です。
新規事業の観点では、
・単価を上げられる
・継続的な関係性をつくれる
・事業ポートフォリオを広げられる
という、非常に重要な特性を持ちます。最初は小さな商品でも、事業の広がり方が最初から設計されているかどうかで、数年後の姿は大きく変わります。
まとめ:CUBLOX®は「事業化に耐える発想」の好例
CUBLOX®が示しているのは、奇抜なアイデアではなく、
・前提を一つだけずらす
・小さく検証できる形にする
・顧客を固定しすぎない
・拡張余地を残す
という、新規事業における王道の思考プロセスです。
もしあなたが今、新しいビジネスの発想を探している、あるいは社内で新規事業を任されているなら、このプロダクトを「商品」ではなく「設計思想の事例」として読み解いてみてください。
そこには、次の一手につながるヒントが、確実にあります。
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