【成功のロジック】なぜ「電球」が介護の救世主になったのか? 巨大市場の「周辺」を狙う逆算思考

IoTとかAIとか、難しく考える必要はありません。実は、家の『電球』一つを変えるだけで、何十兆円という介護市場の課題を解決できるんです。今回はその『逆算のコツ』を、専門用語なしで徹底解説します
新しいスマートフォンを購入した直後、それに合うケースや保護シートを一緒に買う。もはや当たり前の流れです。
この流れをビジネス側から見たとき、スマホ本体(アップルやグーグル)や通信回線(ドコモやauなど)は当然参入対象になりません。
踏み込むべきはその「周辺」。スマホに対するケースやアプリといった本体周辺に広がっているビジネス領域です。
今回の題材である「ハローライト」も同様です。
電源のオンオフで、遠方にいる家族の安全を確認できるというIoTを内蔵した電球による見守りサービスです。まさに介護関連ビジネスの「周辺」を狙い定め、成功している事例です。
果たして、どのように考えればこのような「新しい見守りサービス」が思いつくのか。今回もしっかり掘り下げていきましょう。
1.市場
図1 介護保険給付費

まず、対象市場の大きさです。
介護関連ビジネスは、一般的なビジネスと異なり、介護保険制度によって収益が支えられています。いわゆる介護保険給付費です。
「施設」「地密(地域密着)」「居宅」の3つに大別され、介護保険制度が開始された2000年以降、給付費は右肩上がりを続け(図2)、今や12兆円を突破する勢いです。続けて、介護ビジネスの環境、つまり対象となるシニア層について確認しましょう。
図2 介護保険給付費の推移(単位:兆円)

出典:厚生労働省
2.環境
介護関連ビジネスのカギを握るのは「平均寿命」です。今後も右肩上がりを続け、15年後の2040年には、男性が83.57歳、女性が89.63歳と現在よりもさらに2歳以上平均寿命が伸びることがわかっています。
図3 平均寿命(単位:年)

65歳以上の世帯構成を確認すると、単身世帯が増加傾向にあることがわかります。晩婚化、未婚率の上昇(図5)も手伝って、介護関連ビジネスの対象者が当面の間増加し続けていくことは明らかです。
続けて、こうした環境に対する介護関連ビジネスを確認しましょう。
図4 65歳以上の夫婦のみの世帯及び単独世帯(単位:1,000世帯)

図5 50歳時の未婚率

出典:国立社会保障・人口問題研究所
3.介護関連ビジネス
介護保険給付費は「施設」「地密(地域密着)」「居宅」の3大カテゴリーで構成されています(図1)。この中に新規に参入する可能性はあるのか、確認していきましょう。
まず、介護ビジネスそのもののイメージでもある「施設」です。
図6 介護関連施設の推移(単位:室数)

表1 介護関連施設の違い

さまざまな種類の施設がある中、拡大著しいのが「有料老人ホーム」です。
SOMPOホールディングスをはじめ、大手が先行する中、異業種からの参入が相次いでおり、競争の激しさを伺うことができます(図7)。また、介護施設の性質上、差別化が極めて難しく資本力勝負になる点も新しいビジネスの対象として好ましくありません。続けて、地域密着サービスを確認しましょう。
図7 有料老人ホームの室数規模と主要プレイヤー

表2 地域密着型サービスの種類

地密サービスを確認すると、いずれも「施設」サービスの延長に位置づけられたもので構成されていることがわかります。介護や医療に関する専門知識、スタッフが必要となるなど、その障壁の高さが伺えます。
この点は、提供場所が異なるだけの「居宅」サービスも同様です(表3)。視点を変え、3大カテゴリーから外れた範囲に目を向けます。
表3 地密と居宅の違い

4.3大カテゴリー外のビジネス
図8 3大カテゴリー以外のビジネス

3大カテゴリー以外のビジネスには、高齢者向けのサービスと商品、そして介護事業者向けサービスの3つに分類することができます。
このうち、「既存ビジネスが有利」なものをグレーダウンします。
図9 3大カテゴリー以外のビジネス_02

介護事業者向けサービスは、法律サービスなど既存プレイヤー(弁護士など)が圧倒的に有利であるため除外。高齢者サービス、及び商品の中でも食や整容、住宅や家具といったものも同様です。
残るのは、以下の6つです。
図10 3大カテゴリー以外のビジネス_抜粋

残った6つのカテゴリーのうち、地域コミュニティ、余暇・趣味の分野は既存カテゴリー(表4)を援用したものであるため外します。
表4 60代、70代の余暇・趣味

出典:公益財団法人日本生産性本部「レジャー白書」
図11 3大カテゴリー以外のビジネス_抜粋_02

「見守り支援」と「コミュニケーション支援」のうち、コミュニケーション支援は、ソフトバンクなど既存の通信キャリアが先行しているため、これも除外。残るのは見守り支援で、以下のような既存ビジネスがあります。
図12 見守り支援

見守り支援のうち、在宅高齢者向けの「人による訪問」は昨今の人手不足問題が、施設入居者向けは上述の施設運営会社がカバーするため、この2つはグレーダウンします。
図13 見守り支援_02

機器によるサービスには、「電話、メール」「カメラやセンサー」「GPSの埋め込み」があります。これらがカバーできていない、もしくは抱えている現在の問題点を確認し、新しいビジネスの「余白」を探します。
表5 見守り支援機器の問題点

問題点をクリアする条件は、設置場所を必要とせず、プライバシーが守られ、利用者による利用負担がなく、ある程度リアルタイムにわかり、バッテリーが維持されるもの、です。
設置場所、プライバシー、利用負担がない、バッテリーの4条件から、まず「家電」であることが導き出せます。元々利用者の住まいの中にあり、日常生活の中で使用していることから、新たな設置場所も、利用に関する負担も必要としません。
残るは、リアルタイム性。リアルタイム性を持つ「家電」。つまり、頻繁に利用するものということから、「電球」を導き出すことができます。
※冷蔵庫も考えられますが、頻度の点で電球のオンオフには劣後します。
参考.一般的な電球とハローライトのプロダクト3層モデル


まとめ
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