「焼肉きんぐ」が快進撃を続ける理由:物語コーポレーションの決算書から読み解く成長の秘密

外食産業に逆風が吹く中でも、破竹の勢いで成長を続ける「焼肉きんぐ」。その親会社である物語コーポレーションが発表した直近の決算書(2025年6月期)を分析すると、この快進撃を支える単なる人気だけではない、緻密な戦略と強固な財務基盤が見えてきました。
本記事では、決算書に記された数字を読み解き、「焼肉きんぐ」が好調な理由を深掘りしていきます。
1. 損益計算書が示す「儲かる仕組み」
物語コーポレーションの2025年6月期連結決算は、売上高1,239億2,100万円(前期比15.6%増)、営業利益92億4,200万円(前期比13.1%増)と、見事な増収増益を達成しました。この成長を牽引しているのが、やはり主力の焼肉部門です。
既存店の強さ
単純な店舗数増加だけでなく、既存店の売上高が前期比105.0%と高い水準を維持している点が特筆すべきです。これは、メニューの刷新、期間限定フェアの実施、そして後述する店舗改装といった施策が、既存顧客の満足度を高め、リピート率向上に繋がっていることを示しています。
効率的な運営
原材料費や人件費の高騰が続く中でも、売上高の伸びに近い利益の伸びを確保していることは、効率的なコスト管理と生産性向上への取り組みが奏功している証拠です。デジタル技術の導入や従業員の効率的な配置が、この「儲かる仕組み」を支えていると考えられます。
2. 貸借対照表から読み解く「成長への投資」と「安定した経営」
損益計算書が企業の「儲ける力」を示すのに対し、貸借対照表は企業の「財産」と「資金の調達源」を表します。物語コーポレーションの貸借対照表を見ると、成長と財務健全化の両立が見事に実現されていることがわかります。
【資産の部:成長のための積極的な投資】
「焼肉きんぐ」の成長は、単なる人気に頼ったものではなく、綿密な計画に基づく「投資」によって生み出されています。
特に目を引くのは、「有形固定資産」が43億円以上も増加している点です。この増加分のほとんどは「建物及び構築物」であり、これは新規出店や既存店のリニューアルに多額の投資を行っていることを明確に示しています。快適な空間や効率的なオペレーションを実現する積極的な設備投資が、顧客満足度の向上に繋がり、売上増に貢献しているのです。
【負債・純資産の部:強固な財務体質への改善】
成長投資を積極的に行いながらも、物語コーポレーションは財務体質の健全化にも成功しています。
有利子負債の減少
成長投資に必要な資金を、借入に頼るのではなく、本業で生み出したキャッシュフローで賄っていることがわかります。これにより、財務リスクを低減し、盤石な経営基盤を築いています。
自己資本比率の向上
純資産が増加し、自己資本比率が54.8%まで大幅に改善しました。この数字は、企業の安定性を示す非常に重要な指標です。外部環境の変動に左右されにくい、強固な経営体質が構築されたことがわかります。
3. 「小さな差別化」とマーケティング戦略
決算書だけでは見えない、焼肉きんぐ独自の強みも成長を支えています。
「テーブルバイキング」
ビュッフェ形式ではなく、着席したまま注文できる「テーブルバイキング」は、食事中の移動の手間をなくし、顧客に「落ち着いて楽しめる」という価値を提供しています。
緻密な戦略
肉1皿のグラム数やメニュー構成を緻密に計算し、「小さな差別化」を積み重ねることで、顧客満足度と収益性のバランスを両立させています。
大胆なCM戦略
コロナ禍という逆境の中で、テレビCMなどの広告費を3倍に増やし、ブランド認知度を大幅に向上させました。これにより、消費者の「焼肉を食べたい」というニーズが生まれた際に、真っ先に「焼肉きんぐ」を想起させることに成功しています。
まとめ
物語コーポレーションの決算書は、焼肉きんぐの成功が単なるブームや偶然ではないことを証明しています。
収益力
既存店が継続的に成長する「儲かる仕組み」
財務力
成長投資を自社の力でまかない、負債を減らす健全な財務体質
戦略
顧客体験価値を追求する「小さな差別化」と、大胆なマーケティング戦略
これらの要素が三位一体となり、焼肉きんぐの快進撃を支えているのです。今後、海外展開や新業態開発も視野に入れる物語コーポレーションの動向に、引き続き注目が集まりそうです。
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