【ビジネス分析】なぜ「ジャパネットクルーズ」は爆売れするのか?新規事業を成功させる3つの勝ち筋

テレビCMでもおなじみの「ジャパネットクルーズ」。10日間で数十万円という高単価商品ながら、発売と同時に完売が相次ぐこの事業には、新しいビジネスを立ち上げる上で学ぶべき「顧客体験の設計」と「参入障壁の作り方」が詰まっています。
なぜ、後発のジャパネットがクルーズ市場で独走状態にあるのか。その理由をビジネスの視点から3つのポイントで解剖します。
1. 「不」の解消:徹底的なメンタルコストの削減
ビジネスの基本は「顧客の不満・不安・不便」の解消ですが、ジャパネットは特に「決断のストレス(メンタルコスト)」を徹底的に排除しました。
オールインクルーシブの真価
通常、海外クルーズは「チップはどうする?」「飲み物代は別?」「寄港地での足は?」といった細かな追加費用が発生します。ジャパネットはこれらを全てパッケージ化しました。「一度払えば、あとは財布を出さなくていい」という安心感は、特にシニア層の「損をしたくない」「迷いたくない」という心理に強烈に刺さっています。「移動」という最大のペインポイントを解決
「寝ている間に次の観光地に着く」「荷解きは一度だけ」というクルーズ本来の価値を、ジャパネットは「究極のラク」として再定義しました。
ビジネスへのヒント
顧客が「購入後に悩むポイント」をあらかじめ先回りして潰しているか? 価格を安くするよりも、「思考停止できるほどの安心感」を提供することが高単価商品の成約率を高めます。
2. ローカライズ(日本仕様化)による独自の差別化
MSCベリッシマという「世界基準の巨大船(ハード)」を使いながら、中身の「ソフト」を徹底的に日本人の嗜好へローカライズしています。
「外資」の豪華さと「日本」の安心のハイブリッド
外国船の華やかさは維持しつつ、食事(おにぎりや麺類)、言語(日本語スタッフと新聞)、設備(大浴場)を日本流にカスタマイズ。ジャパネットブランドの「信用」を転用
海外クルーズには「言葉が通じない」「マナーが分からない」という高い心理的ハードルがあります。それを「あのジャパネットがやるなら大丈夫」という既存の信頼で突破しました。
ビジネスへのヒント
既存の優れたプラットフォーム(ハード)を借りて、そこに「特定のターゲットに特化した独自の運用(ソフト)」を乗せる。このハードとソフトの組み合わせこそが、競合が真似しにくい参入障壁になります。
3. 「垂直統合」に近い顧客体験のコントロール
ジャパネットは単なる取次店ではなく、船を丸ごと「チャーター(貸切)」することで、サービスの品質を自社でコントロールしています。
独自シャトルバスの運行
通常なら現地の交通機関任せにする「寄港地からの移動」も、自社でバスを手配。これにより、「船を降りたけど、どこへ行けばいいかわからない」という体験の断絶を防いでいます。「ジャパネット社員」が同乗
外注の添乗員ではなく、テレビで見かけるような自社社員が乗船することで、顧客とのエンゲージメント(親密度)を爆発的に高めています。
ビジネスへのヒント
サービスの一部だけを提供するのではなく、「顧客がそのサービスを使い終わるまでの全工程」の中に、自社が関与できるポイントはないか? 顧客との接点を増やすほど、LTV(顧客生涯価値)は向上します。
結論:私たちが学ぶべきこと
ジャパネットクルーズの成功は、「豪華客船を売っている」のではなく、「豪華客船という不安な乗り物を、日本一安心して楽しめるパッケージに変えて売っている」点にあります。
新しいビジネスを考える際は、以下の問いを自分に投げかけてみてください。
そのサービスは、顧客の「細かい決断」を減らしてあげているか?
既存の優れた素材を、特定のターゲット向けにカスタマイズできていないか?
購入後から体験終了まで、顧客を迷わせない仕組みを作れているか?
圧倒的な「おもてなし」を仕組み化したジャパネットの戦略には、ITサービスから店舗経営まで通じる、商売の真髄が隠されています。
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