【既存のビジネスモデルを逆にせよ】書店ビジネスの事例

【既存のビジネスモデルを逆にせよ】書店ビジネスの事例

 

新しいビジネスを考えるとき、常識が邪魔をしてつい「同じ流れ」で考えてしまいます。

例えば、カフェビジネスなら、一般的なカフェのスタイルを参考にする、といったことです。

もちろん、既存ビジネスのスタイルを【分割】や【統合】するなどアレンジを加えて成功しているケースもたくさんあります。

しかし、絶対的な差別化を構築し【脱・価格競争】を実現するのであれば、もう一歩踏み込んで、流れそのものを反対にする視点で考えてみましょう。

「流れを反対にする?」

一体どういうことでしょうか?
具体的な事例を交えながら、ご紹介しましょう。

 

真逆を考える

ご紹介する事例は、【書店】です。
書店・出版市場はご存知のとおり、今非常に厳しい状況です。書店はこの20年間で約半数に減ったと言われています。

市場参加者である出版社、取次、書店によって様々な戦略が取られていますが、なかなかうまくいくケースが見当たりません。

そうした中、冒頭でご紹介した【流れを逆にする】という視点を取り込んだ秀逸な事例が出てきました。関東近郊で12店舗のチェーンを展開する「ブックスタマ」の仕掛けです。

ブックスタマ
http://www.bookstama.com/

 

従来の書店の流れは、

著者(執筆)→出版社(企画・構成・デザイン)→印刷会社(印刷)→取次(卸・流通)→書店(販売)

です。

書店はバリューチェーンの最後に位置し、本を委託販売するポジションです。消費者は本屋に立ち寄り、目当ての本を探したり、立ち読みしたりして、本を購入する。

書店と利用者との間にあるのは、本の売買という接点だけでした。これはかのアマゾンでも同じです。

ここにブックスタマが提供したのは【本を出す】という新しい付加価値。

コンセプトは「行くだけで著者になれる書店」。書店に行くと著者になれるチャンスがある。まさに、さきほどの流れの逆ですね。

ブックスタマには、「出版企画応募要項」が付いた指定書籍があり、これに応募すると40社に上る出版社に企画書を提出できるという仕掛けです。

本を読む人の中には、「いずれ自分でも本を出したい」と考えている人が少なからずいます。そうした隠れたニーズに光を当てたのがこのビジネスモデルなのです。

利用者は本を購入して知識を得るだけでなく、本を出す側、つまり知識を提供する側のチャンスを得ると同時に、書店は利用者に【本を売る場所】だけでなく、【著者になれる窓口】になったのです。

顧客が諦めているニーズを探れ

そうなればいいな、と思ってもそう簡単にいかないことが世の中には沢山あります。
その1つが本を出すこと。著者になることです。

ビジネスに関する多くの分野では【プロになるための道】が専門学校や大学などで用意されています。
授業料を支払い、何年かがんばって通えば資格が取れ、晴れて専門家になれるチャンスがあります。

しかし、著者になるための道は・・・思い当たりませんよね。どうやってなれるのか。
明快に答えられる人は出版関係者以外にはいないでしょう。

実現したいけど、実現するための手段がない。
そうして諦めている人はたくさんいます。
そうした人に向け、実現手段を提供する。

今までは無理だと思っていたことが、どうやらできそうだとなれば、間違いなく一定規模の人が動きます。ビジネスチャンスになる可能性があるのです。

注意しておきたい3つのポイント

このビジネスモデルに限らず、新しいビジネスモデルを発想する際に注意したいことが3つあります。

一つめは、コスト構造
すべてのビジネスモデル発想に共通する必須のチェック項目ですね。
オペレーションを設計したら、コスト構造はどうなるのか。ぜひ考えてください。
もちろん、いろんなシーン別の想定が必要です。
ビジネスはそうそう思い通りに運ばないからです。

二つめは、参入障壁
ブックスタマの事例では、ビジネスモデルを構成する3つの要素が組み合わって、簡単にマネができないようになっています。

同じ手法で参入するためには、少なくとも①リアル店舗、②出版企画書作成ノウハウと出版社へのルート、さらに③拡散機能の3つが必要です。

顧客との接点になる店舗を<WEBサイト>への置き換えは可能かもしれませんが、そのあとのフローはそう簡単に構築できません。

新しいビジネスモデルを思いついたら、その完成形が他社や他業界によってそう簡単にマネできないかどうかのチェックを丹念に行ないましょう。

ビジネスには、野球でイチローを目指すような難しさはそうそうありません。だれかが出来たということは、他の人にもできることを同時に証明しているからです。
最後の3つめは、既存資産の活用。極力、今ある資産を活用しましょう。

理由は2つ。最悪のケースを想定し、失敗に終わっても原状回復が簡単であること。そしてもう一つが、利益率を高めること。

さきほどの事例でも、既存の書店としての流れは何も変えていません。新たに対象となる【書籍】を指定しただけ。
それによって書店に立ち寄る人が増えれば、そのまま売上が伸び、利益もUPします。

新しいビジネスモデルを考えるようとすると、つい手段も「新しいもの」をとなりがちですが、そんな必要は一切ありません。

今あるものを最大限活用し、利益を大きくすることを念頭において考えてください。

■既存の付加価値に+αする

差別化が難しい時代になりました。
商品やサービス単体で他社と違いと出すのはもはや簡単ではありません。

ぜひ、ご紹介したように従来の商品やサービス提供はそのままに、新たな付加価値を追加する手法を検討してみてください。予想した以上の利益を手にすることができるかもしれません。