成功モデルを逆からたどる_case01_有料書店「文喫」

成功モデルを逆からたどる_case01_有料書店「文喫」

あのビジネスモデルは、どうやって思いついたのか。
このサイトでも様々な発想法をご紹介していますが、これまで実例に基づいてどうなるのかを試みたことがありませんでした。

そこで、新シリーズとして、成功したり、話題になった古今東西のビジネスモデルを、逆からたどってみたいと思います。

逆からたどる?

どうやって、そのビジネスモデルに行き着いたのか、着想へと(もちろん仮説の範囲を超えませんが)逆に追ってみることです。

一般的に、ビジネスモデルに関する記事のほぼすべてが、結論を土台にしたものか、フレームワークによる分類またはアイデア出しです。

もちろん、これはこれで有益なのですが、本当に知りたいのは、

「どうやって、そのモデルにたどり着いたのか」

です。
記念すべき第一弾は、株式会社スマイルズが展開する「文喫」です。
(http://bunkitsu.jp/)。

1.文喫とは

まずは、「文喫」というビジネスの概要から。
WEBサイトには、

文化を喫する、入場料のある本屋。

人文科学や自然科学からデザイン・アートに至るまで約三万冊の書籍を販売します。一人で本と向き合うための閲覧室や複数人で利用可能な研究室、小腹を満たすことができる喫茶室を併設しています。エントランスでは約九十種類の雑誌を販売。普段はあまり出会うことのできないラインアップも交え、来店されたお客様の新たな興味の入り口となります。また、企画展も定期的に開催します。

とあります。

一般書店との違い

一般の書店との最大の違いは、「有料」であること。
1,500円で1日中、本を読むことができます。

本をじっくりと読むために、「閲覧室」や「研究室」そして「喫茶店」
があります。(喫茶店では、「珈琲」と「煎茶」がおかわり自由)

誰にも邪魔されず、一日中、本を読むことに没頭できる場所、です。
(もちろん、購入することも、取り寄せや取り置きといった一般の書店と同様のことも可能です)

本が大好きな人にとっては、まさに天国のような場所です。

2.この着想にたどり着くにはどう考えればいいのか

さて、ここからがこのシリーズの本題です。

「入るために入場料が必要な書店」

どうすれば、この着想にたどり着けるのか。
ちなみに、文喫を手がけられた株式会社スマイルズでは、「なぜ、そうなっているのか」を問うそうです。

センスのある人はそれで思いつくかもしれません。
しかし、それでは私たちのような凡人には出番がなくなってしまいます。

そこで、2人の先人の知恵を借りることにしました。
1人は17世紀の哲学者「デカルト」、もう1人は、紀元前500年頃の中国春秋時代の人、「孫武」。孫子の兵法です。

孫子の兵法で述べられているのは、

「敵と自分、戦う場所」について詳しく調べ、それをもとに「陣形」を決め、敵よりもいち早く戦場にたどり着き、早期に決着をつける」

です。
この流れにデカルトの方法的懐疑の要素を加え、次のような4つの手順
で考えていきます。

1)ビジネステーマについて
2)既存のビジネスモデルと市場について
3)消費者が持つ「不」
4)導き出される「解決策」

1)ビジネステーマについて

新しいビジネスモデルを考える際に、ぜひ押さえておきたいことが1つあります。「テーマ」がビジネスとして適切かどうか、です。

ビジネスには必ず「テーマ」があります。
今回ならテーマは「書店」です。

もちろん「出版社」でも、「本」でも選ぶことができますが、
いずれにせよ注意したいのが、そのテーマに次の2点があるかどうかが重要です。

 ・継続性
 ・認知度

1の「継続性」は、繰り返し必要とされるか、繰り返し発生するか、です。

オーソドックスに、1度利用したら当面必要ない、関わる必要がないものは当然当てはまりません。(家具などの耐久消費財がそれに当てはまりそうに見えますが、家具は「常に」使います。家具レンタルのようなモデルの可能性が十分あるわけです)

2つめの「認知度」。
これは誰にそのビジネスを説明する際、“一から説明する必要がない”かです。詳しい説明はいりませんよね。

さて、「書店」はどうでしょう?
人にもよりますが、繰り返し立ち寄るでしょうし、「書店」が何かを知らない人は世の中に存在しないでしょう。

「書店」は、継続性、認知度のいずれも満たしていますから、ビジネステーマとして適当です。(詳しく述べるまでもありませんが、そのまま参入する前提ではありません)

2)既存のビジネスモデルと市場について

続いて既存のビジネスモデルと市場です。

①ビジネスモデル

ビジネスモデルは、継続的な収益が得られるしくみのこと。つまり、

 ・どうやって収益を上げているか
 ・どうやって継続性を保っているか

これがビジネスモデルの説明になります。
では、書店のビジネスモデルはどうやって収益を上げているのか。
書店ビジネスは百貨店などと同じく、「委託販売」。(百貨店の場合、消化仕入と呼びます)

トーハンや日販などの取次を経由して、さまざまな出版社が出した本を店頭に並べて、売り切れた(売り切れそうになった)ら追加で注文するという流れです。売れ残ったものは返品し、売れた分を計上するので、(形態上の)販売リスクはありません。

次に継続性を保つ機能。
取次や出版社との契約があり、配本されるしくみ、つまり「流通経路」です。この点は新聞販売店とも似ていますね。

こうした「基盤」によって安定的な仕入を確保できている一方で、その特有の制度によって、対売上高営業利益率は0.02%ととても低いのも特徴です。

②市場

出版市場は、よくネットでも取り上げられているとおり、極めて厳しい状況です。公益社団法人 全国出版協会・出版科学研究所によると、

紙市場は5.7%減の1兆2,921億円 書籍は2.3%減、雑誌は9.4%減
2018年の紙の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売金額は前年比5.7%減の1兆2,921億円で14年連続のマイナスとなりました。内訳は、書籍が同2.3%減の6,991億円、雑誌は同9.4%減の5,930億円。

出典:https://www.ajpea.or.jp/information/20190125/index.html
とあります。グラフにすると一目瞭然です。

下がり続けている市場に参入するのは、どうなのか。
そう思われたかもしれません。
もちろん、ビジネスの王道として、拡大傾向にある市場やテーマを選ぶのは必須です。
しかし、必ずしも☓とは限りません。

その典型的なケースが、既存のビジネスモデルが通用しなくなってきたものです。
例えば、わかりやすい例でいくと「ニュース」。
新聞は厳しい状況にありますが、ニュースアプリは活況です。つまり、ビジネスモデルがそぐわなくなってきただけであって、テーマそのものが☓になったわけではない。
こうしたビジネステーマが選ぶに値します。

3)消費者の「不」を探す

「書店」について、「ビジネスモデル」と「市場」を確認しました。
続いて、そうしたビジネスの形態や現状に対して、消費者が抱く「不」は何かを洗い出します。

先述したとおり、現在、出版・書店ビジネスは厳しい。
ではなぜ、そうなっているのかを“消費者側の視点”から掘り下げていき、そこに「新しい解決策」の糸口を探します。

消費者の「不」を探す

新規ビジネスを考える際に、よく利用される方法ですね。例えば、

・不満
・不安
・不快
・不便
・不足
・不経済
・不信

といったものです。「書店」に対してどんな不を抱くのか。
例えば、不便。駅から遠い、といったことをブレストなどによって洗い出す方法です。

もちろん、このままでもいいのですが、一歩踏み込んで、「不」を生み出す原因、すなわち人が持つ「価値観」を基準にすることをおススメします。(さまざまな場面で価値観が満たされないとき、人は「不」を感じるからです)

価値観には、ざっと次のようなものがあります。

こうした人が持つ「価値観」は、時代の趨勢や経済環境や心理状態などによって変化しますが、基本的には同じです。IT技術の発展などによって、「見え方」の種類が大きく増えただけに過ぎません。

価値観は、消費者がその「対象」に対して、考えたり、行動したりするとき、その都度、意識、無意識を問わず感じています。

例えば、お昼時間になった。「あー、今日はどうしよう」と考える。コンビニ弁当にするか、たまにはランチを食べに行くか。でも給料日前だし、コンビニ弁当にした。こうした決定プロセスの後ろで動いているのが、その人の「価値観」です。

さて、書店に対して、一般的に消費者が持つ価値観は何でしょう。
価値観は、その対象に対して考えたり、行動したりすると生じるものでした。わかりやすく消費者が書店に対して取る行動で考えてみましょう。

どうやら、

・書店に立ち寄る
・本を探す
・本を買う

の3つしかありません。
この3つそれぞれの行動の際、消費者が抱く「価値観」。1つずつ見ていきましょう。

1)書店に立ち寄る

よく起こりがちな気持ちは、

①立ち寄りたい   → 楽しみ
②立ち寄りたくない → 面倒くさい
③(あの本を買いに)立ち寄らなければならない<義務感>
④(この後アポがある)立ち寄っている時間はない<義務感>

さきほどの「価値観」の一覧のうち、「楽しさ」と「利便性」が当てはまりそうです。③と④は義務感、つまり「理性」。価値観は「感情ベース」ですので、ここでは外します。

何かいい本はないかな、探していたあの本を買いたい、という「楽しさ」。そして、駅から近いからちょっと立ち寄ろうという「利便性」(②は利便性が提供されていない)。

2)本を探す

続けて、本を探す。

①(買う本が決まっていて)あの本はどこだろうか
②何かいい本はないだろうか
③(変な本を買って)間違いたくない

①に対して起きるのは、探す手間を省いてくれる「利便性」ですね。
この価値観に対応しているのが、大規模な書店によく設置されている「端末」がそれです。
②は、とくに買う本は決まっていないけど、「いい本」に出会いたいという「探す楽しみ」です。
③は失敗に対する恐怖と、教えてほしいという気持ちです。
価値観の一覧で「品質/保証・実績」や「一流」がここに当てはまります。

3)本を買う

最後の本を買う。書店以外の一般的な小売の場合、

①買う「楽しみ」
②安く買えた「コストパフォーマンス」

があります。しかし、書店の場合、先述したとおり「再販維持」があるため、そのままではコスパは該当しません。

そのままでは、というのはたとえ定価販売であったとしても、「コスパ」のことを考えてしまうのが私たち消費者だからです。

「なんとかもっと安く手に入らないだろうか」と考えるからこそ、図書館の利用者数が増え続けているわけです。(ガベージニュース:図書館の貸出冊数や利用者動向をグラフ化してみる(最新))また、それに合わせるように、家計における支出も減り続けています。

統計局/家計調査(家計収支編)調査結果より

こうした傾向から見えるのは、(少し横道に逸れますが)「活字離れ」と言われるようになって久しいですが、決して「本を読みたくない」わけではないようです。

楽天ブックスが「2018年の読書量」を聞いたところ、最も低いカテゴリーの「年間6冊未満」が全体の42.1%で最も多かった。

月あたりの読書量に換算すると「月に一冊の本も読まない」は全体の60.8%にのぼり、「月に10冊以上の本を読む」と答えた人(3.9%)の15倍以上となった。

役職別にみると、「月に1冊以上6冊未満の本を読む」と答えた割合は、若手社員の24.7%に対して、管理職が34.3%で10ポイント近く上回った。

一方で、「月に6冊以上の本を読む」と答えた割合は、若手社員の11.3%に対して、管理職が7.3%と、逆に若手が4ポイント上回る結果となった。

調査結果から、ビジネスパーソンの「読書離れ」が明らかになった2018年。しかし、「2019年の抱負・目標」を尋ねた質問(複数回答可)では、1位の「貯金をしたい」(48.3%)に次いで「読書をしたい」(32.1%)が2位にランクインした。

引用:J-CASTニュース「ビジネスパーソンの読書 「月に一冊も読まない」が6割」

つまり「本を読むこと」そのものに必要性がないとは思っていない。
裏返すと、工夫次第ではまだまだ「本を読んでくれる人」を増やせる可能性があるとも言えます。

本は読みたい(できれば読んだほうがいい)、でもできればお金はかけたくない、だから図書館を利用する(または中古を買う)。

書店から離れた人の中にはこうした気持ちがあるのは確かです。一言で言い換えるなら「節約」、つまり「コスパ」ですね。

1)書店に立ち寄る
2)本を探す
3)本を買う

この3つの行動に対して、見つかった価値観をここで改めて書き出してみます。

・利便性(駅から近い、目的の本を探しやすい)
・楽しさ(本を探す楽しみ)
・品質・保証(間違いたくない)
・コスパ(新刊書店では満たされていないが)

さて、価値観が出揃ったところで、いよいよ「解決策」です。
これらの価値観に対して、既存のビジネスモデルでクリアされていないものはどれか、これを探して、それに対する解決策を考えます。

上述の場合、一目瞭然ですね。「コスパ」です。
ここで、

「ん?3つめの品質・保証もあるのでは?」

と思われたかもしれません。
残念ながら、すでにあります。札幌にあるあの「一万円選書」です。

「一万円選書」
http://iwatasyoten.my.coocan.jp/99_blank001.html

長年に渡って書店経営をしてきた店主が持つ「選本眼」がそれにあたるわけです。

さて、コスパですが、

「図書館がその解決策になっているのでは?」

と思われたかもしれません。
もちろん、その通りです。
本に対するコスパではたとえAmazonでも図書館に勝てません。

しかし、そこで諦めては「売上」を逃したままになってしまいます。

一見すると難しい。
しかし、だからこそ、「ビッグチャンス」が眠っていると思いませんか?
とはいえ、既存のビジネスでは、独特の業界慣習があり、商品の価格そのものをどうこうはできません。(無論、Amazonのようになってしまえば可能かもしれませんが、その場合、ご存知のとおり様々な問題を引き起こすだけです)

商品そのものの価格ではなく、別の何かによって「コスパ」を提供する。これを考える必要があるわけです。

4)導き出される「解決策」

別の何か。つまり、本以外の何かによって、です。
実は、これこそが新しいビジネスモデルの根幹とも呼べるものです。
冒頭でご紹介した「孫子の兵法」でもっとも大切なこととされるのが、このこと。

いわゆる「戦わずして勝つ」です。

では、実際に本以外のどこにそれを探せばいいのか。
考えうるポイントには次のようなものがあります。

既存のビジネスモデルのアレンジする10の切り口

これは、300個ほどのビジネスモデルの事例から抽出したものです。
これ以外の可能性が完全に消せているとは言い切れませんが、それはとてもレアだと断言できます。

1つずつ簡単に例を交えながらご紹介しましょう。

モジュール

モジュール、つまり単体の機能のことです。
あるビジネスモデルの中から、「特定の機能だけを切り出したもの」です。
例えば、スマホを使った「決済サービス」。
これは、本来銀行の提供機能の1つです。そこから機能単体、つまり「モジュール」を抜き出したモデルです。

ビークル

ビークルとは乗り物のこと。不動産用語で、特定の物件を所有する会社、つまり「器」のことをこう表現します。ビジネスモデルにおいては、商品やサービスが流通する基盤のことです。

例えば、現テーマの書店なら「流通基盤」がこれです。
この基盤を変えることで、新しいビジネスモデルを生み出す。

最近、一般的になりつつある産地から農作物や魚などを直接消費者に届けるビジネスモデルがまさにこれです。

戦略

企業が取る戦略、例えば拡大戦略や価格戦略などいろいろありますが、業態などそれ以外のすべてをそのままにして、「戦略」だけをチェンジしてしまうものです。好例として、セブンイレブンの十八番である「ドミナント戦略」を逆にした「姫路まるまさ」https://ate-link.jp/があります。

オペレーション

オペレーションの説明は割愛します。
オペレーションのどこかをアレンジして、新しいビジネスモデルを作る。
これに該当する事例はたくさんありますが、中でも有名なのが、QBハウスですね。
また、低価格パソコンで有名なマウスコンピューターもこれに該当します。

ターゲット

ターゲットを変える。
戦う場所を変え、競合と争わない王道の1つです。
事例として有名なのが、zoffなどの格安メガネチェーンですね。
本来ならメガネを必要としない人に向けたメガネを提供する。
新しいビジネスモデルを考える際、ぜひ最初に検討したい項目です。

価格・課金

価格を変える、課金方法を変える。
少し前からちょっとしたブームになっている「サブスクリプション」がまさにこれに該当します。ただ、サブスクリプションの事例として指摘されているとおり、商品やサービスが持つ性質次第では、価格もしくは課金体系が合わないこともあるので、その点注意が必要です。

コンセプト

商品やサービスそのものをあまり変化させられないとき、このキーワードが約に立ちます。
コンセプトを変えることで、まったく別のものに生まれ変わらせるのです。
有名な事例として、「ファーストキャビン」https://first-cabin.jp/があります。

パートナー

ビジネスパートナーをチェンジする。
ビジネスモデルを作り上げる際、必ず外部のパートナーと組む必要が出てきます。
有名ケースが、「ファブレスモデル」。自社で製造せずに、企画だけ行い、製造や物流を外部に委託する方法です。

技術・リソース

自社が持つ技術やリソースを、現業ではなく、別のビジネスに投下するアレンジです。
例えば、金属加工技術を用いたスマホケースや有名な例では「魔法のフライパン」(https://www.nisikimi.co.jp/)などがあります。

 

さて、本以外、上述の一覧のうち、「商品・サービス」以外で、コスパを提供する、これが解決策の候補になるわけです。

つまり、新たな「課金の対象」を作ること
課金がなければ、コスパは生み出せませんよね。

ここで、一部で展開されている「カフェの併設」に気づかれた方もたくさんいらっしゃると思います。

そうですね。書店が物理的に提供できるのは、「本」と「店舗」だけ。
であるなら、新たに追加して、付加価値を作ろうとしたのがカフェ併設です。

事例の「文喫」の場合は、ここで「追加」ではなく、課金の対象を商品である「本」ではなく、店舗にしたわけです。

先述した一万円選書もこれに似ています。
もちろん「本代」はかかるわけですが、利用者は「本そのもの」ではなく、店主が持つ「選本眼」にお金を支払っているわけです。

でなければ、自分で本屋に行くか、ネットで1万円分買えば済む話ですから。

3.まとめ

有料書店「文喫」がどうすれば思いつくのか、を見てきました。
手順は、次の4つでした。

 

1)ビジネステーマについて
そのテーマが果たしてビジネスモデルに適しているのかどうか。
継続性と認知度、この2つを満たしておく必要がありました。
「書店」の場合、どちらも該当します。

2)既存のビジネスモデルと市場
孫子の兵法でいうところの「敵」と「戦う場所」を知ることです。
既存のビジネスモデルがどうなっているのかを知ることは、新しいビジネスモデルを発想する上で、絶対に押さえておく必要があります

また、市場については必ずしも縮小傾向にあるからといって☓とは限らないのでした。そのテーマ自体がなくなりつつあるのではなく、既存のビジネスモデルが合わなくなっているケースがある。「書店」の場合も、独自の制約事項によって、Amazonなどに後塵を拝していることが十分に考えられます。

3)消費者の「不」を探す
「不」から一歩進んで、「不」を引き起こす原因である、消費者の「価値観」から掘り下げていきました。価値観には次のようなものがありました。

テーマについて、消費者が取る行動や考えに沿って、どんな価値観があるのかを見ていきました。書店の場合、

・利便性(駅から近い、目的の本を探しやすい)
・楽しさ(本を探す楽しみ)
・品質・保証(間違いたくない)
・コスパ(新刊書店では満たされていないが)

でした。
そして、この中で、現時点でまだ満たされていないものはどれか。
結果、「コスパ」となりました。

ただし、独自の制約によって、本そのもので「コスパ」を提供することははばかられる。であるなら、「本以外」でコスパを提供できないだろうかと行き着きました。

4)導きだされる「解決策」

ビジネスモデルを次のようなポイントのいずれかでアレンジできないかと考えるのでした。

書店が物理的に提供できるのは「本」と「店舗」のみ。
近年増加しているカフェ併設は、「追加」によってコスパを提供しているのでした。また、同様の切り口で先行して大成功を収めているのが「一万円選書」でした。

ここまでの流れを見てきておわかりになるとおり、新しいビジネスモデルを着想する手順は、「まだ手を付けられていない」もしくは「手を付けられているが、他の解決策が考えられる」ものを探していくプロセスです。

散々考えた末にも関わらず、先を越されていたー

仮にそんなことになったとしても諦めないでください。
必ずまだどこかに「スキマ」があるはずです。

なぜなら、あなたが見つけられるものは、他者も同じです。
あなたがそう簡単に見つけられないもの、それこそが「大金鉱脈」なのですから。