新しいビジネスアイデアを思いついたら確認してほしいこと

新しいビジネスアイデアを思いついたら確認してほしいこと

新しいビジネスモデルを考えたいー。そういった相談を時折受ける。本業が安定している先、早急に新しい収益基盤を創る必要がある先などさまざまだが、おおよそ、何らかアイデアのブループリントがある。サービス業に限定されるが、精度をブラッシュアップするために、伝えていることのうち「投入する市場」と「ビジネス個別の要件」についてご紹介したい。

ビジネスを投入する市場について

まず、個別のアイデアについてではなく、新たなビジネスの投入という観点でポイントが3つある。1つめは、今現在流行しているものを模倣するケース。これは、傾向に追随することを否定しているのではなく、そのタイミングを見ている。

適切なタイミングを推し量る指標の1つとして、「二次情報の出現」がある。新聞やテレビの情報番組で取り上げられた時点のことで、準備とその浸透にかかる時間分、さらに遅れを取るため、かなりの後発を覚悟しなければならない。無論、商材やサービスのカテゴリーによっては、需要が散在し、かつ頻繁にプレイヤーが入れ替わるものもあり、必ずしも当てはまらないこともある。後発での遅れが障害にならない差別化要素があるかがその成否を分ける。

2つめは、既知の範囲内でやろうとすることだ。経験の、知識のない他業界の方法を持ち込んだり、その業界へ乗り込むことも少なからずリスクがあるが、自社の知りうる限りで完結させようとするのも機会損失の恐れが内在している。

3つめは、とにかくコストをかけない、もしくは掛けすぎるという極端な投資だ。一概に過剰か過少かはケースバイケースだが、どのようなビジネスであっても確実に「OBゾーン」は存在する。計画段階でどの程度の規模を想定しているのか、その内容次第では、せっかくのアイデアを破綻させかねない。

ビジネス個別の観点

個別のビジネスアイデアを精査するポイントは、取引、仕組み、そして構築・運用の3つだ。

まず、取引においては「連続性」と「収益性」がある。単位あたりの取引において、この2つが備わっているかどうか、である。連続性とは、取引発生間隔とも換言できる。1つの取引があって、その次が発生するまでのタームだ。ITや建設関係などは長く、小売業や理美容業界など日用的なものは比較的短い。単純に短期間が良く、その逆が悪いということではなく、「意図された」「計画された」ものであるかどうか、予実の差を十分想定できるか、ここが重要である。

収益性とは、単位取引においてどれだけ利益が生み出せるか、だ。ビジネス全体で必要とされる利益を構成する最小単位であり、当初から一定期間またはある程度まとまった取引の中で採算を取ろうと考えているのはお勧めできない。1取引の中で、確実なペイラインがあるかどうか。一時的な割引などは、あくまで限定的で、かつ意図的でなければならない。

2つめは、仕組みだ。「整合性」「非属人性」として、競合との「差別化」の3つである。

整合性は、その仕組みの業務フローを指す。よく起こりがちなのが、業務間の情報伝達における重複である。違う業務で同じようなデータを生成することで、いわゆる「シャドーコスト」の温床となってしまう。

非属人性と競合との差別化については、文字通りだ。とくに「属人的」な活動は、マニュアルを導入しにくい知的集約型に起こりやすく、比較的定型化可能な労働集約でも能力差や経験差によるバラツキが生まれてしまうことがある。完全に排除することは難しいが、取引発生期間と同様、予め想定しておけるかどうかで大きな違いが生まれる。

3つめの構築・運用については、その「実現可能性」と「継続性」が問われる。意外にも運用面の優先順位が低く見積もられているケースがある。構築はある程度まで力技で推し進めることも可能だが、運用面では「人手」や「追加コスト」など時間の経過とともに、ビジネスの根幹を揺るがしかねないリスクがある。仕組みとして申し分なく、十分に利益を獲得できるものと確信できたら、ぜひ継続性も同時に検討しておきたい。

省略化するために

ビジネスモデル全体の側面と、個別のチェックポイントを紹介してきた。これらを詳細に確認し、加筆修正することがもちろん正攻法だが、とにかく時間と手間がかかる。そうこうしているうちに、そのアイデア自体が陳腐化してしまうかもしれない。

そこでお薦めしたいのが、成功事例の「パーツの模倣」だ。成功済の、一般に十分定着しているビジネスを部分的に借用してしまう。これであれば、その部分の機能検証を省略することができる。もちろん、時流から外れている、法改正などによって機能しないなどの確認は必要だが、少なくとも、ビジネスのパーツとしての精度はある程度保証されている。

わかりやすい例でいけば、近年ブーム化している「マッチング」がある。最も多いのが人材紹介やクラウドを利用したスポットビジネスなどをよく目にする。クラウドを使い、フリーランス向けにそういったことを展開する余地はないが、マッチングという機能だけを抜き出し、別のビジネスに転用することが考えられる。

例えば、「広告枠」と「広告主」だ。実際にある例だ。ほかにも、Uberに対抗して始まったタクシーサービスなども、タクシーに乗りたい人とタクシーを結びつけたマッチングだ。発展、応用版として、現在検討されている「相乗り」などもある。

マッチングという機能が当てはまる事例には事欠かない。明らかにビジネスのパーツとして、十分に「枯れて」いる。あとは、「何」と「何」を結びつけるか、ここに焦点を絞って考えることができ、発想から実行までの時間短縮を見込める。