人の価値観

人の価値観

どうすれば、その商品やサービスを選んでもらえるのか。

以前は、「問題を解決する」この1点だと考えていたときもある。どうやらそうではなさそうだと気づいたとき、1冊の本を思い出した。

マーク・トウェイン著「人間とは何か」

“人間もまた非人格的な機関にすぎん。人間が何かってことは、すべてそのつくりと、そしてまた、遺伝性、生息地、交際関係等々、その上に齎される外的圧力の結果なんだな。つまり、外的諸力によって動かされ、導かれ、そして強制的に左右されるわけだよ。”

その程度の差はあれ、人は外部から与えられた情報や刺激によって、判断し、行動することは明らかだ。では、人が商品やサービスを購入するとき、判断材料にする情報にはいったいどのようなものがあるのか。

いろいろ調べつくした結果、次の5つの要因が交わって、最終的に商品やサービスを選ぶことが明らかになった。

1)(その人が身に付けた)知識
2)経験
3)1)と2)から形成された価値観
4)(外部から与えられた)情報
5)(その人のそのときの)状況

1〜3は文字通りだ。
生まれ育った場所、家庭環境や通った学校や努めた企業、そして人間関係から作り出される。

4は、テレビなどのオールドメディア、SNSなどのソーシャルメディア、そして人づてに仕入れるパーソナルメディアなどから与えられた情報の大きく3つが存在する。

5は、そのとき、その人が置かれている状況のことだ。何か問題を抱えているときかもしれない。もしくは反対にその問題が解決した直後かもしれない。

一見すると、いずれも推定することが難しい。
家庭環境なども、どれほど厳しい状況あったとしても、人によっては反面教師とするだろうし、人によっては、飲み込まれ、犯罪や歪んだ性格形成につなげてしまうケースがある。

その中で、唯一の例外、それが「価値観」だ。
細かい部分では人によって違いがあるが、「モノやサービスを購入する、利用する」という状況において発動する価値観は、次の16個に収まる。各要素について概要を述べるとともに、その価値観に当てはまっているビジネスをそれぞれ紹介したい。

消費者の価値観

1.仲間/友人(つながり)

有名なマズローの欲求説の「社会的欲求」に相当する。
ルソーの「社会契約論」、アリストテレスの「政治学」にもあるとおり、人は社会というものを形成し、その中で生きていくしかない。

“かくて以上によって見れば、国家が(まったくの人為ではなくて)自然にもとづく存在の一つであることは明らかである。また人間がその自然の本性において国家をもつ(ポリス的)動物であることも明らかである。”

DNA的に人とのつながりを求めている。
価値観だけではなく、本能の1つに当てはまり、強い動機になるうる。
この価値観を利用したビジネスといえば、いわずもがなSNS全般だ。
もちろん、これだけではない。

・街コン
・起業、婚活、終活など、特定のライフタイムにいる人向けのサービス
・社外交流会、セミナー
・オンラインゲーム

などがあてはまる。
2010年頃からSNSの登場とともに活発化、表面化してきたこの価値観は、まだまだ使いみちがある。現在、独立(オフライン)状態のものをオンライン化するのだ。ファッションのIoT化などがこれに当たる。

2.正義/倫理

ソーシャルメディアが世論の中心になった結果、個人間での議論が著しく増えた。オールドメディア全盛の情報一方通行時代にはなかったことだ。

人が集まる。当然、ギリシャ・アテネ時代のアゴラではないが、そこに議論が生まれる。議論が生まれると、だれかれなく「何が正しいのか」を求めはじめる。これも「つながり」と同様、DNA的に刻み込まれている。

ビジネスに置き換えると、

・トレーサビリティ関係
・エシカル関係

など、社会貢献的なものや、何かを「証明するもの」が当てはまるほか、

・議論系サイト
・ニュース、解説系サイト

などもここに当てはまる。

3.自然志向

人が自然の一部であることはいうまでもない。
花を愛でたり、散策することも本能的に求めている。
それは、外にあるものだけではなく、自分が使うもの、口に入れるものも当てはまる。

ビジネスに置き換えると、

・無添加の食品、化粧品
・旅行
・花や植物

といったものが該当する。

4.純粋・シンプル

グーグルがそのシンプルさで成功したことは有名だ。
一方で、複雑な機能をもった商品、近年のスマホなどが距離を置かれるのもこのためだ。

人は理解できないものを、無意識のうちに嫌う。
不安に苛まれるのもそのためであったりする。

反対に、わかりやすいもの、理解できるものに安心感を覚える。人によってはその内容次第では、共感を感じることもある。例えば、何かの話をする際、1つのテーマに絞れとよく聞くが、まさにこのためだ。複雑な話を好む人はいない。(専門的な話は複雑ではないか、と思われるかもしれないが、それには別の欲求が働いている。また、事前知識があり、理解できることも背景にある)

ビジネスに置き換えると、「あらゆるビジネス」が該当する。

5.カスタマイズ

自分の自由にしたい。この欲求から立ち上がる価値観である。
この裏返しとして、「誰かや何かに制約、制限されたくない」という気持ちでもある。
ビジネスに当てはまるものでは、「旅行」「不動産」「衣服」「家電製品」など多岐に渡る。

6.品質・保証/実績

一昔前、LPページで「全額保証」という文字をよく見かけたことがあるが、まさにこれだ。また、トップページに、○○万個売上!や○○で第1位と踊るのも同様だ。

安心したい。この根源的な欲求がこの価値観を支えている。
今ではすっかり影を潜めつつある、メイドインジャパンもこれだ。
日本製=確かなものというコンテクストがあった。

さきほどのシンプルと同様、すべてのビジネスに欠かせない価値観だ。

7.コストパフォーマンス

消費税増税によって、一層デフレが加速する中、このキーワードがさらに強さを増している。
なお、注意したいのは、必ずしもコスト=お金ではないことだ。ここには、

・心理的
・時間的

なコスパも含まれている。

ビジネスに置き換えると、

・格安航空など既存ビジネスの低価格版サービス
・代行業全般(時間の節約)
・時短につながるノウハウ

などが当てはまる。

8.リラックス/癒やし

このキーワードをストレートに提供するビジネスがある。
2016年に経済産業省にセラピストという職業が認定され、企業の福利厚生施設の一環として導入されるほど認知度が広がっているリラクゼーション業だ。
その市場規模は1兆円を超え、人手不足問題などを抱えつつも、拡大傾向を続けている。

リラクゼーションといってもその範囲は広く、「ボディケア」「エステティック」「アロマテラピー」「リフレクソロジー」「スパ」「ヨガ」「岩盤浴」など多岐にわたる。

9.健康的(肉体・メンタル)

人生100年時代や、健康寿命というキーワードをよく目にする。
この言葉の裏に存在する本来の意味は別だが、いずれにせよ人は、「健康」でありたい。病気になりたくない。中でも、メンタル面での健康は、働き方改革などにも置き換えられる通り、社会問題になっている。

肉体的・心理的負担を減らす。鉄板の価値観だ

ビジネスに置き換えると、

・睡眠改善(睡眠研修、マッサージ、昼寝スペースなど)
・人間関係改善(セミナーや講座、研修など)
・食事全般
・スポーツジムやトレーニング方法
・アロマテラピー

といったものが当てはまる。
なお、ここに当てはまらないものでも、この価値観を+することは有益だ。

例えば、コストパフォーマンスにあった、代行業。
ここに心理的負担を減らすものとして登場したのが「退職代行業」に他ならない。

「退職代行」EXIT
https://www.taishokudaikou.com/

以上、紹介した9つの価値観のほかに、

・一流
・新しさ
・利便性
・機会増加
・楽しい

といった普遍的な価値観も存在している。

どのような問題を解決しているのかと同時に、どんな価値観を満たしているのか

ビジネスでうまく行かないケースとして、ときおり見かけるのがこれだ。
問題解決はできているが、どうも軌道に乗らない。

そうしたときは、ぜひこの「価値観」をチェックしてみて欲しい。
また、新たなビジネスを考える際には、今のビジネスが満たしている「価値観」に他の価値観をプラスできないか、ぜひ、検討してみてほしい。大きな差別化が実現可能性に突き当たるかもしれない。