駐車場ビジネスで見つけた「エキナカ式」ビジネスモデル

駐車場ビジネスで見つけた「エキナカ式」ビジネスモデル

若者の車離れが叫ばれる中、駐車場オーナーの収益を高めるソリューションを提供した見事なビジネスモデルの事例をご紹介しましょう。

1.駐車場の空中に店舗を作る?!

フィル・パーク
http://philpark.jp/

なんと、駐車場の上に店舗を開発するという驚きのビジネスモデルです。

店舗の位置は、ちょうど駐車場に2階ができるイメージ。既存の駐車場の機能を壊わさず、従来どおり車を止めることが可能です。

駐車場ビジネスはそのままに、新たに店舗を構えることで、駐車場オーナーの収益がさらに増えるという仕組みなのです。

2.成果

創業から11年で70店舗に至り、2016年マザーズへの上場が決まっています。11年での上場はかなり短期です。

3.ビジネスモデルの可能性

3−1.継続性

駐車場ビジネスはそれだけで、「継続性」を持つビジネスです。車の利用者が減りつつあると言われていますが、車の保有台数と駐車場の規模を見る限り、十分すぎるほどです。この市場性を持ったビジネスに新たな付加価値を提供する事例のケースは、十分すぎるほどの継続性が見込めます。

parking-count

出典:全日本駐車協会「全国駐車場整備状況調査」

3−2.収益性

駐車場がある場所は、そもそも車が止めやすい、つまり利便性のよい場所と言えます。
さらに、駐車場そのものの機能を維持しながら、追加で店舗運営を行っているので、土地の取得コストがありません。また、その場所のオーナーも同じ。

つまり、主要な固定費の1つ、家賃の負担が既存ビジネスである駐車場で吸収されているため、新たに開発した店舗の運営コストはかなり有利です。

3−3.構築の難易度(参入障壁)

駐車場ビジネスは、土地さえあれば、だれでも始めることが可能です。

差別化になるのは、「場所」。
駅前や人通りの多い場所や、病院、公共施設など生活や仕事に欠かせない拠点などに近いかどうか。ここがポイントです。

一方で、事例の場合はどうでしょう。
店舗運営自体はそれほど難しいものではないでしょう。

しかし、店舗の構築は一筋縄ではいきません。
普通に上物を立てるのとは異なり、駐車場に車を停めることが可能なままで、空中に店舗を構えるこの仕組みは、耐久性などの技術面や法律等の適正な基準クリアなど一朝一夕ではできないでしょう。

4.留意事項

既存ビジネスをアレンジする場合、真っ先に気を配りたいのが「法律要件」です。

特にこうした不動産関係の場合は、その建物に関する建築許可の条件を建築基準法、自治体ごとの規制を確認しておくことが欠かせません。

事例の場合、飲食店などの店舗もありますので、保険局関係のチェックも必要です。それぞれ、独断で走り出すことなく、まず専門家、並行して関係省庁の窓口、自治体等へ確認しておきましょう。

また、税制のように改正される場合もあります。3ヶ月に1回程度、内閣府、総務省、経済産業省、法務省、国税庁のチェックもお忘れなく。

・内閣府
http://www.cao.go.jp/
・総務省
http://www.soumu.go.jp/
・経済産業省
http://www.meti.go.jp/
・法務省
http://www.moj.go.jp/
・国税庁
https://www.nta.go.jp/

5.こうした仕組みを発想するためのポイント

今ある既存ビジネスに新しい付加価値を付ける。
どうすればこの発想を引き出せるのでしょうか。

なお、予め注意したいポイントは、既存ビジネスを壊さないことです。

これは事例のケースに限ったことではありません。元の形を壊してしまっては、既存ビジネスの収益を落としかねません。

では、既存ビジネスを壊すことなく、新たな付加価値を付けるにはどうすれば良いのか。そのために必要となる発想が、既存ビジネスのリソース(資産)価値の洗い出しです。

6-1.既存ビジネスの価値を洗い出す

駐車場ビジネスの場合、これが持っている価値は何でしょうか?

・土地があること
・車が止まること
・運営に人員を要しないこと
・運営に複雑なオペレーションがいらないこと

といったことが挙げられるでしょう。

さて、問題はここからです。
価値それぞれについてまだ使い切っていないと思われる点はないか。このような視点で掘下げます。

例えば、車が停まること。
駐車場なのだから当たり前、と終わらないで下さい。

反対に考えると、車を停めて終わっているとも言えるのです。つまり、それ以上のことは何もしていない。せっかく、車を停めてくれているにも関わらず、です。

この発想で大成果を出しているのが、JRのエキナカです。駅は電車が止まるところ、人が乗り降りするところ。

乗り降りする人に何か提供できないか。
駅はそのまま。電車もそのまま。そこへ何かを付け加え、乗り降りする人に新しい付加価値を提供する。こうして生まれたのがエキナカです。

似た事例で、美容室の椅子を貸し出すというサービスがあります。シャンプーやカットを行なう、美容室独特の椅子です。

これをフリーランスの美容師に貸し出すという仕組みです。美容室自体は何も手を加えていません。そのままです。

ただ、椅子を新たに貸し出しただけ。固定費も元々かかっていますから、新たに発生する費用はそれほどではないでしょう。

貸し出すフリーランスの美容師から利用料として回収すれば、原価も発生しない純粋な利益を継続的に獲得できます。

今ある資産で、それ以上のことができないか。
すでにある資産を活かすことは、最強のビジネスモデル・パターンの1つです。

ぜひ、おもいっきり掘下げてみてください。事例のように、数年先には上場を果たす仕組みが出来上がるかもしれません。