【3年後を見える化する】60分でできる簡単シナリオ分析術_改訂版

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スマホ。
今や全世界での普及台数は13億台です。
これだけの数が広がるためにかかった時間はどれくらいかご存知でしょうか?

なんと、わずか7年です。
アップルがiPhoneを2008年に、翌2009年にグーグルがアンドロイドを出しました。それからたった7年で全世界に広がったのです。

スマホの席巻は、消費者の行動やライフスタイルを大きく変えました。
インターネットで何かを調べる際、今まであれば「自宅のPC」だったのが日中、移動中に変わったのです。 商品やサービスの利用も一緒に変わりました。こうした大きな変化がビジネスに多大な影響を及ぼすことは、言うまでもありません。

環境の変化には次のような種類があります。

1.環境変化の種類

1−1.新しい技術の登場

さきほどのスマホのように、広がるスピードが早い変化です。
ただ新しい技術は、必ずしも「デファクト・スタンダード」になるかわからない、という一面もあります。

たとえば今、グーグルが自動運転の車を作ろうとしています。(断念したというニュースもありましたが、違う形を模索しているかもしれません)
人の手を介さない車です。もし、実現すれば既存の自動車メーカーへ計り知れない影響を与えます。

とはいえ、

・実証実験がなかなかうまくいかず、実現時期が不明
・電気自動車のような必要設備の普及の目処
・生産・販売体制の構築
・法整備や道義的な障壁(グーグルグラスや、図書館書籍の電子化など例も)

など実現にグレーな部分があるのも確かです。
新しい技術が生まれたからといって、すぐに世の中を席巻するかどうかはわかりません。一昔前にあったAV技術の規格競争のように、安易に飛びつくのは危険です。

もちろん、無視するのは頂けませんが、多少の出遅れは気にせず、その技術やサービスが定着するか継続的に行く末を見定めることが重要です。

1−2.法律の改正

消費税増税など法律の改正です。
昨年始まったマイナンバー制度なども大きなうねりになっています。
新しい技術と違い、法律の改正は施行が決まればまず変更されません。
予想しやすい変化の1つです。
民法改正(2018年を目処としているという報道あり)や毎年の税制改正、現在検討されている「消費者契約法」などは、商取引自体に多大な影響を及ぼすので、特に注意が必要です。

法律の改正チェックにはサイトが役に立ちます。

総務省「新規制定・改正法令・告示・法律」
http://www.soumu.go.jp/menu_hourei/s_houritsu.html

1−3.新規参入

新規参入には2つのパターンがあります。

1-3-1.業界間のシームレス化

例えば、スーパーやコンビニ。
野菜や自然食品を置くコンビニもあり、違いは何?と聞かれれば「時間」と「拠点数」くらいしか思い浮かばないかもしれません。

明確な違いが薄れ始めています。
業界の垣根がなくなったことで、結果的に「新規参入」しているパターンです。

1-3-2.異業種からの参入

IT企業がファッション事業に乗り出すなど、まったく畑違いからの参入です。業界慣習にとらわれていない分、服を売らずに「レンタル」するといったトリッキーな手法が使われます。

既存のメーカーからすればトンデモないやり方です。
ただし、新規参入や、業界間の垣根が崩れ始めたとき、「これはヤバイ」と考え、安易に模倣してはいけません。(大手が意図的に模倣戦略をとって、中小の競合先を潰すケースとは違います)下手をすると、自社の特徴や長年にわたって作り上げた資産を捨ててしまう恐れがあるからです。

動向を見定め、自社の資産の範囲内で、対策を想定しておくのが賢明です。

1—4.新しいビジネススタイルの登場

これまでにない事業構造の出現です。
近年の事例では、専門ではない事業者や個人がサービスや商品を提供するパターンが増えています。

例えば、タクシー業界に対する米ウーバーや、ホテル業界に対するAirBnB。少し前なら、ネットフリックス(フジテレビの協力で日本へ進出しました)など。

国内でもオンラインによるクリーニングサービスなども登場しています。
既存の競合先だけではなく、SNSやWEBメディアで話題にのぼり始めた先にも注意を向けておきましょう。

Sankei-Biz「中小企業」ニュース
http://www.sankeibiz.jp/business/lists/company-n.htm

 

1−5.顧客の変化

景気動向、法律改正、新しい技術の出現などによって顧客行動が変わります。

例えば「Suica」。
単に改札の自動化を図っただけでなく、買い物自体をSuicaで済ませるのも当たり前の風景に変えました。

1つの技術によって、消費者のライフスタイル自体を変えてしまった最大の事例です。

衣食住、仕事、ライフスタイルなど自社のビジネスに当てはまるカテゴリーについて、顧客が今どのような認識を持っているのか。

こうした顧客・消費者の変化は、ある程度ネット上で情報収集が可能です。法律改正のあとや、大きな景気変動、新しい技術の登場後にはぜひ、チェックしてみてください。次のようなサイトが役に立ちます。

・みずほ総研「調査レポート」
http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/index.html

・大和総研「リサーチ」
http://www.dir.co.jp/research/

・第一生命経済研究所「経済分析レポート」
http://group.dai-ichi-life.co.jp/cgi-bin/dlri/jpn.cgi?key1=trends

・野村総研「オピニオン」
http://www.nri.com/jp/index.html

1−6.景気動向

消費者の財布の紐、企業の設備投資を左右します。
政府などが発表する以下のような指標値に目を向けておく必要があります。

・内閣府<景気ウォッチャー調査>
http://www5.cao.go.jp/keizai3/watcher/watcher_menu.html

・内閣府<景気動向指数>
http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/di.html

・内閣府<消費動向調査>
http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/menu_shouhi.html

・総務省統計局<人口推計、労働力調査、家計調査、消費者物価指数>
http://www.stat.go.jp/data/index.htm

・博報堂生活総研[生活インデックスレポート]
http://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/21980

1−7.海外動向

対象となる動向はとてもたくさんありますが、ざっと以下のようなものが挙げられます。

  • 新技術・新サービス
    欧米、とくにアメリカ発の新技術や新サービス。
    世界展開スピードが年々速さを増しています。Newsweek日本語版「ビジネス」
    http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/
  • 為替
    ロイター「外国為替フォーラム」
    http://jp.reuters.com/investing/currencies/fx-forum
  • 訪日外国人の増加 日本政府観光局(JNTO)
    http://www.jnto.go.jp/jpn/reference/tourism_data/visitor_trends/
  • 低価格商品の流入 → 新興国の台頭
    現在は、日本企業が参入し、裾野を広げていますが、ネクストビリオン(次世代の10億人と呼ばれるタイやマレーシア、インドネシアなど新興国の未来の中間層)がいる地域は、いずれ中国や韓国のように自国での生産能力を高め日本へ参入してくるでしょう。
  • 戦争やテロ、紛争 → 為替、株価、ガソリン価格への影響
  • 天気 → 干ばつによる農作物への影響英字新聞を読むことに抵抗がなければ、海外紙のWEBサイトのチェックもおすすめします。

 

2.環境変化に対して打つべき手立てとは

ここまでご紹介したような環境変化に対して、一体どうすればいいのでしょうか?

何も手を打たず、従来通りに進んでいけば、飲み込まれるだけです。
家電業界が、新興国の台頭に対して旧態依然の「技術優先」の戦略を取り、追い詰められたのは記憶に新しいところです。

では、どうすればいいのか。
ぜひ用意したいのがシナリオ、いわゆる「仮説」です。

シナリオ? そんなことはどんな企業もやっているだろう?
残念ながら多くの企業がシナリオに加えていない点が1つあります。

2−1.多くの企業がシナリオに加えないポイントとは?

それは、「自社にとって都合の悪いシナリオ」です。
たとえば、じわりと広がり始めている「クラウドソーシング」。
似たようなサービスは一昔前にもありました。 しかし当時は、

・通信環境が整っていなかった
・スマホやタブレットのように手元で情報を確認する手段がなかった

などが理由で普及しませんでした。

今は状況が違います。
通信は「光」が当たり前。
従来の10倍のスピードを提供する光回線のサービスも登場するほどです。
オリンピックに向け、無料wi-fiの設置も進んでいます。
結果、クラウドの利用がさらに広がる可能性も高い。
クラウドが一般化すればどうなるでしょうか?

ソフトやアプリは購入せず、「利用」で済ませるのが当たり前になります。マイクロソフトが、主力商品の一つである「Office」をライセンス方式へ切り替えたのは、こうした背景があります。

いままで、販売で売上を立てていたものが成立しなくなる。
非常にショッキングな話です。

だからこそ受け入れがたい未来も想定に入れることが大切です。
無視したり、ぞうはならないだろうと勝手に決めつければ取り返しの付かない状態になりかねません。

予測する上では、ぜひ自社にとって都合の悪いことも含めて考えてください。都合の悪い予測をうまく切り返せば、逆に売上拡大につながるチャンスでもあります。

事実マイクロソフトのケースでは、「office」を年間1万円ほどでWindowsだけでなく、MacやiPad、iPhoneなど様々な端末で使えるようにしました。結果、今まで以上にOffice製品の利用頻度を上げることに成功しています。

 

3.シナリオの立案方法

では、実際にシナリオをどのように洗いだしていけばいいのか、 簡単な事例を使ってご紹介します。

例えば、新聞の発行部数。
2015年現在、日刊紙など全新聞の発行部数は約5,000万部と言われています。このまま減少しつづけたらどのような事が起こるのか。

数年前からウェブサイトへの移行が進み、新聞各社は有料サイトを提供しています。

しかし、ヤフーやグノシーに代表されるとおり、もはやニュースを知るためにお金を払う人はほとんどいません。
(日本経済新聞ですら、有料会員はサイト訪問者の5%程度)
さらに、グノシーの「必要なニュースだけを集める機能」には、既存の新聞では太刀打ちできません。 新聞離れはますます加速すると考えるのが適当です。

購読部数が減りつづけるとどうなるか。
街中にある新聞販売店が減ります。
本屋のように巨大店舗に集約される?

それはないでしょう。単純に無くなるだけです。
本と違い、需要そのものが減っているからです。

新聞を買いたい人はどこで買うのか。 コンビニか駅ナカになるでしょう。
ますますコンビニの売上が伸びることが予想されます。

新聞に変わる紙ベースでのメディアの台頭はあり得るか。
これはない、と考えるのが妥当ではないでしょうか。
一部フリーペーパーがある程度の基盤を持っていますが、新聞のように人口の半分近くをカバーするほどの規模はありません。

このように、どんどん考えられる出来事をつなぎ、洗い出していきます。
なお、箇条書きで書くと掴みづらいので、次のようなツリー状の構成でまとめることをお勧めします。

記事22_環境変化_シナリオ

さきほどもお伝えしたとおり、シナリオには「偏り」があっては意味がありません。

自社にとって都合が良いか悪いかは一旦おいて、どんな展開が考えられるのか、自社が置かれている環境がどのように変化していくのか、ぜひ洗い出してみてください。

まとめ

起こりうる7つの環境の変化と読み取るためのシナリオについてご紹介しました。変化は「リスク」だけではありません。

自社がさらに発展する「チャンス」も出てきます。
ぜひご紹介したシナリオツリーを使って、御社の未来の利益を確保してください。